山口隆(サンボマスター)Special Interview -後編-

8月 19, 2022


 

グレッチを持つことによって歴代のギタリストたちの“輝き”を受け継ぐ

 

ロックンロールの初期衝動をベースにソウルやファンク、ジャズなどさまざまなジャンルを取り入れたサウンドでシーンを賑わせ続ける3ピースバンド、サンボマスターから山口隆(唄とギター)が登場。後編では、コロナ禍でも積極的に活動をしてきたその思いについて、熱く語ってくれた。

 

─ ところで、山口さんがギターに求めるのはどんなことですか?

山口隆(以下:山口) こちらからギターに求めるものは特にないですね。むしろ、こちらがギターに寄せていきたいというか。例えば、音がすげえ良くても弾きにくいギターってあると思うんですよ。でも僕ははそういうのはあまり気にならないです。逆に楽しくなってくるんですよ。“こうやって弾いてくれないと、いい音なんて出ないよ、わかるでしょ?”とギターが言ってきてるみたいで。そういう時は、“そうだよね!”とこちらも同意して合わせていく。で、いろいろ試していく中で“そうか、君はこんな音も出してくれるのか”みたいなことがわかってくることにも喜びを感じます。“俺が求めている通りの音を出せ!”みたいな感じじゃないです。

 

─ なるほど。出会った楽器、新たに導入した楽器によって作る音楽も変わりますか?

山口 それは、間違いなく変わりますね。ギターって1本ずつ音が全然違うと僕は思ってて、例えば同じGコードを鳴らしたとしても、ギターによって響き方や聞こえ方がまるっきり変わってくると思ってます。自ずと作る曲の雰囲気も変わってきます。そういう意味で、使っている楽器が多少なりとも曲作りや音作りに影響を与えているのは間違いないですね。

ライブでの表現も、弾き方が変われば変わってくると思います。音の立ち上がりのスピードや、ピックが弦に当たる時のニュアンスだってギターによって違いますから。

 

─ そんな山口さんにとって、グレッチのギターを弾くことの醍醐味と言えば? 

山口 グレッチを持つことによって歴代のギタリストたちの“輝き”を受け継ぐというか、“俺もああいうふうに弾けるようになるかなあ”なんて夢まで見せてくれるんですよ(笑)。ロックンロールの輝かしい歴史の中に、自分自身も入っていけるような気がする。

 

─ 先人たちの“響き”、つまりエッセンスを現代に引き継いでいくというか。

山口 そうですね、それは大事だと思う。先輩にでっかいグレッチを弾かせてもらったり、“これを弾きこなすなら、こっちのピックのほうがいいな”なんて試してみたり。何かそういうディテールも好きなんですよね。Falconシリーズには、ピックガードの部分にファルコン(ハヤブサ)が描かれているとか。カッコいいじゃないですか! そういうの全部ひっくるめてリスペクトがあります。

 

Sambomaster Special Interview D

 

─ 前回お会いしたのは、1回目の緊急事態宣言が明けたくらいのタイミングだったんですよね。その時に山口さんが“全然活動ができなくて、やべえと思っています”とおっしゃっていたのを覚えています。

山口 僕らだけじゃなくて、みんながそうでしたよね。ライブがなかなかできない時期がかなり続きましたし。そこに関しては、“とにかくできる範囲でやり続けなくちゃ”とは思っていました。感染予防対策を万全にして、ちゃんとガイドラインに沿ったライブを実行することで、“あ、これだったらライブへ行っても心配はなさそうだな”とお客さんに感じてもらうようにする。そのためには、とにかく実績を積み重ねていくしかないなと個人的には思ってます。言っておかなきゃいけないのは、これに関しては本当に多くのバンドさんやライブ関係者の方、そして来てくださるオーディエンスの方々が努力と実績を積み重ねていってくださって、いま何とか開催できるライブやフェスも増えてきたのだと僕は感じてるということ。そうやって音楽を愛するみなさんが努力、模索してくださった結果が“今”だと思うんです。今、こうやってライブができているのもそのおかげだと思っています。

 

─ 自分たちのことだけを考えている場合じゃないと。

山口 この2年間でものすごくたくさんの若い才能が花開いていると思うんですよ。そういう人たちにとって、この状況は僕ら以上につらいですよね。彼らが自分たちの音楽を、気兼ねなくちゃんと発信できるような環境を作るように努力することも、僕らのやるべきことのひとつかなぁと思います。別に偉そうなことを考えているわけじゃないんです。僕たちがちょっとでも動くことによって、才能やポテンシャルに溢れた人たちが、コロナ禍で少しでもチャンスを掴むことができるのであれば、やれることはやりたいという気持ちだけ。

もちろん僕だけが考えていることじゃないと思うんですよね。バンドはもちろん、ライブハウスやフェスの運営に関わっている人たちみなさんそうやって考え行動しておられると感じています。

 

─ 音楽は、その時の世の中の状況に反映するものだと思うんです。この2年は新しいことを始めるアーティストたちはとにかくライブができないから、動画コンテンツに力を入れるなど、何とか道を切り開きながら進んでいますよね。

山口 新しい表現を始めている方々がいるのは素晴らしいことだと思います。そこでまた新しい道ができて、表現の場が増えていくわけだから。例えばフェスも配信するものが増えてきていますよね。やりたい表現の選択肢がそうやって広がっていくのは良いことじゃないかな。もちろん、その上でライブが以前のように出来るような状況になれば最高なんだけど。

 

─ では最後に、これからギターを始めてみたいと思っている読者にアドバイスをお願いします。

山口 僕が人様にアドバイスなんてとんでもない話です。だって、これからの人、今やろうとしている人は、その時点で才能に溢れているから。“大人が言うことなんて気にせず好きにやってくれ“としか、僕からは言えないです。

君には素晴らしい才能があるし、そう思い込んだほうが絶対にいいと思う。きっとロック好きな人なら、いつかグレッチに出会うこともあるでしょう。

 

前編はこちら

 


 

サンボマスター

山口隆(Vo,Gt)、近藤洋一(Ba,Cho)、木内泰史(Dr,Cho)からなる3ピースロックバンド。2000年結成。2003年、オナニーマシーンとのスプリットアルバム『放課後の性春』でメジャーデビューを果たす。2022年8月17日(水)、豊洲PITにて〈サンボマスター 対バンツアー 2022「LIVE with NAKAMA」〉を開催。

https://www.sambomaster.com