小川幸慈(クリープハイプ) SPECIAL INTERVIEW -前編-

4月 9, 2025


 

持ち替えた瞬間に心が震える。そういうギターって、なかなかないと思うんです

 

クリープハイプのギタリストとして、唯一無二のフレーズとサウンドで楽曲に強い個性と温度を与え続けてきた小川幸慈。これまでの愛機であるフェンダーのJazzmasterとは異なる個性を持つグレッチと本格的に出会ったのは、昨年リリースした7枚目のオリジナルアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』の制作中だったという。そこからWhite Falcon、6120へと少しずつ距離を縮めてきた彼が、今回Professional Collection Falcon Hollow Body(Cerulean Smoke)を試奏。その第一印象からサウンドの手応え、今後の可能性まで、ギタリストならではの視点で語ってもらった。インタビュー前編では、グレッチとの出会いと、その魅力を深掘りする。

 

─ 小川さんにとって、グレッチとの出会いはいつ頃だったのですか?

小川幸慈(以下:小川) ちゃんとグレッチを弾いたのは、実は去年が初めてなんです。去年リリースしたアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』の中に、「星にでも願ってろ」という曲があって。その曲で“ロカビリーっぽいサウンドを狙ってみよう”という話になったんです。それまでは、曲調的に近いものはあっても大抵はJazzmasterで作っていたんですよ。でも今回は、“いや、ちゃんとグレッチを弾いてみようかな”と。ちょうどそのタイミングで、White Falconを持っている知り合いから“全然貸すよ!”と言ってもらえて。それで試してみたのがグレッチと出会ったきっかけですね。

 

─ 小川さんと言えばJazzmasterのイメージが強いですよね。そんな中で、グレッチを初めて持った時の印象はどうでしたか?

小川 やっぱりボディの大きさが第一印象としてありますよね。今回のツアーでもその「星にでも願ってろ」でグレッチを弾くんですけど、Jazzmasterから持ち替えた瞬間に“あれ、アコギ?”という感覚になる(笑)。弦のテンション感も違うんですよ。少し“沈む”というか、緩さがあるというか。それこそが、グレッチのサウンドの特徴にもなっているのだなと思います。

あと、ライヴではステージが暗かったり、照明がチカチカしていたりするじゃないですか。そういう中で“あ、自分って意外とポジションマークを無意識に見ていたんだな”と気づかされました。何となく視界に入っているくらいの感覚だったんですけど、実際は頼りにしていたんだなと。ゴールドのバインディングに照明が反射してポジションマークが見えにくくて、初めてそのことを実感しました。それもあり、“グレッチの他のモデルも試してみようかな”と思ってネットで見つけたのが6120です。

 

─ ネットで購入したのですね?

小川 販売元が三重のほうだったんですけど、三重までは取りに行けないなと。ツアーの最初の2〜3本はWhite Falconで弾いていたのですが、途中から6120を現場に持って行って、スタッフと一緒に音の感じをチェックして。“これ、すごくハマるね”ってなって、今のツアーではその6120をメインで使っています。

 

─ ちなみにWhite Falconは、結構カスタムされていますよね?

小川 持ち主がアクセサリーを作る方で、ツマミの部分をシリンダーっぽい形に加工したり、ヘッドにドクロのマークをつけたり。そういう遊び心というか、ロックンロールな雰囲気も“うまみ”があって気に入っています。

 

White Falcon6120の、音の違いはどうですか?

小川 このWhite Falconはわりと高域に派手さがありますね。対して6120は中低音がしっかりしていて、どっしりとした腰のある音がします。見た目的にWhite Falconのほうが大きくて低音がしっかりしているかなと思ったんですけど、実際に弾き比べてみると違いました。

 

─ ギターを選ぶ際の基準はありますか?

小川 やっぱり“握った感じ”ですね。音や見た目ももちろん大事ですが、最近は特に、手に持った時のフィーリングが決め手になることが多いです。

 

Ogawa Creephype 2

 

─ では、今回試奏してもらったProfessional Collection Falcon Hollow BodyCerulean Smokeについてのインプレッションをお願いします。

小川 クリーントーンがすごくキレイですね。音の温かみもあるし輪郭もはっきりしている。ロックなイメージが強いギターだけど、改めて触ってみると、とてもナチュラルに鳴ってくれます。「星にでも願ってろ」のAメロは、6120だと指がギリギリ届くハイポジションを弾いていて。これは、ちゃんと指が届くかなと思って試しに弾いてみたら、しっかり届くし鳴りもすごく良い。

 

─ カラーリングも美しいですよね。

小川 写真で見た時は少しかわいらしい印象もあるのかなと思ったけど、実際に手に取ってみると、むしろスマートで洗練された感じがあって。すごくいいなと思いました。

 

─ どんな場面でこのギターを弾きたいですか?

小川 やっぱりライヴで使いたいですね。形や色など見た目的なインパクトも大きいですし。グレッチって、やっぱりとても象徴的な存在感を持っているギターだと思うんです。たとえば浅井健一さんや、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケさんなど、僕らの世代にとって“グレッチと言えば”というイメージがすぐに浮かぶアーティストは多いですよね。レッチリのジョン・フルシアンテとか、ギターをグレッチに持ち替えた瞬間に心が震える。そういうギターって、なかなかないと思うんです。僕自身はまだグレッチを弾き始めたばかりですが、これからもっと弾いて、自分なりに深く知っていきたいです。表現の幅も広がりそうだし、新しいサウンドを生み出す上でも、きっと活躍してくれる気がしています。

 

Ogawa Creephype 3

Professional Collection Falcon Hollow Body(Cerulean Smoke)

 


 

クリープハイプ

2001年結成。2009年11月に現メンバー体制となり、本格的に活動をスタートする。2012年、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。2014年に初の日本武道館2days公演を開催、2018年5月にも約4年ぶりとなる2度目の日本武道館公演〈クリープハイプのすべて〉を成功させる。2024年11月には、キャリア史上最大規模の会場となるKアリーナ横浜で、現メンバー15周年記念公演〈2024年11月16日〉を開催。2024年12月に7tnアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』をリリースした。

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