内⽥怜央(Kroi)Special Interview -後編-

7月 12, 2022


 

ギターに思い入れを注ぐのは、すごく素敵なことだと思う

 

R&B、ファンク、ソウル、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルを主軸にしつつ、衝動的なロックを織り交ぜるなど鮮烈なミクスチャーサウンドを構築する5人組バンド“Kroi”から、ヴォーカル&ギターの内田怜央が登場。後編ではギターを始めたきっかけ、バンドが描く音楽的なビジョン、今後の展開について話を聞いた。

 

“声”というキャッチーな楽器を使って、本物の楽器の良さにどう気づいてもらうか

 

― ギターを始めたきっかけは何ですか?

内田怜央(以下:内田) それこそインタビューの前編でも話した、ブライアン・セッツァーさん、Charさん、布袋寅泰さんの3名のライヴを観に行ってからですね。実は、小学校2年生くらいから本格的にドラムのレッスンに通い始めて、その先生がやっているビッグバンドのライヴを観に行った時に、ギターの人がめちゃめちゃいいソロを弾いていたり、いろいろなタイミングが重なって“ギターを始めたいな”って。で、英語を教わっていた先生の息子さんがギターをやっていたので、パワーコードを教わりました。

 

― 最初はどんな曲を弾いていましたか?

内田 布袋さんの「MERRY-GO-ROUND」を弾いていました。あとはB’zも好きだったので「イチブトゼンブ」も弾いていましたね。「イチブトゼンブ」と「DIVE」はレッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスが叩いているので、それで中学校2年生くらいからレッチリにはまって。それからスティーヴィー・ワンダーにいって、ソウルという音楽があることを知ってさらにファンクを掘っていきました。

 

― ファンク、ソウル、R&B、ロック。オールジャンルミックスのKroiのサウンドは、どのようにコンセプトを固めていったのですか?

内田 バンドメンバーみんなが集まった時に、もともと自分もドラムでファンクとかソウルとかフュージョンをやっていたという流れから、わりとそういう曲が多かったっていうのはあります。

 

― 世界的にR&Bやファンクがホットな中、日本はようやく盛り上がりつつある感じですよね。

内田 そうですね。ヒップホップもソウルもファンクもそうですし。逆にロックが劣勢になっているのは、もともとロックキッズなので“どうしようかな”とは考えています。一つの音楽が流行るのではなくて、もっと全体で戦えるシーンになったらいいなと思うんです。だからこそ、今もロックのテイストをミックスしています。

 

― ファンクって曲が長くなりがちだと思うのですが、今の時代に合わせてコンパクトにしようとしていますか?

内田 それはないですね。“この時代に長い曲ってすごいですね”ってよく言われるんですけど、“あ、そうなんだ”と思って(笑)。時代的に考えていることと言えばイントロ。サブスクだとパン!ってイントロを聴いて、興味がなかったらすぐに次の曲にスキップしてしまうので、そのパン!の時にどのくらい印象を残せるかは考えています。

 

― 曲全体の長さは関係ない?

内田 関係ないと思いますよ。ギターソロは本当に聴きたい人が聴いてくれたらいい。俺らは楽器が好きだし音楽が好きなので、そういう人たちからしたら“何で聴かないの?”って思うけど、(ギターソロの良さが)わからない人には本当にわからないと思うので(笑)。うちの親もインストの曲を聴かないんですよ。それは悲しいことだと思うけれど、それを今言ってもどうしようもないから、どうにか聴けるような施策を打っていかなきゃいけないなと逆に課題が見えた感じがします。

 

― なるほど。

内田 歌も歌いますけど、もともとはドラムから始まって、やっぱり楽器が好きなんですよ。Kroiは楽器にフィーチャーしたバンドなんです。インストとかフュージョンも大好きで聴いていたので、わりと楽器をみんなに聴いてほしいという想いがあって、その前提で歌を“キャッチーな楽器”として曲に取り入れていったら、こういう感じになったという。なので、歌があってその後のギターソロも聴かせちゃう、そういう状態に自分たちの楽曲を持っていけたらいいですね。楽曲全体で“やっぱりこれはギターソロがあったほうがいいな”って、みんなに気づいてもらえるんじゃないかなと思っています。

 

― とは言え、楽器を演奏してない人たちに楽器の魅力を伝えるにはどうしたらいいですかね?

内田 それをずっと考えていますね(笑)。Kroiはそれをやっている感じがしています。“声”というキャッチーな楽器を使って、本物の楽器の良さにどう気づいてもらうか?はKroiの楽曲の目標にしているところではありますね。

 

Kuroi Special Interview D

自分が衝撃を受けた楽器を買ってほしい

 

― ところで、今年のKroiはバンドとしてどのような活動をしていきますか?

内田 『telegraph』というアルバムを夏(7月27日(水))にリリースして、秋にそれを引っ提げた全国ツアーを廻ります。

 

― アルバムはどんな感じですか?

内田 ジャンルに縛られず、自分たちのやりたい楽曲を詰め込んだアルバムです。まだ制作中ですが(笑)。頑張っていますので楽しみにしてもらえると嬉しいです。

 

― 最後にビギナーへアドバイスを。このG5420T Electromaticは10万円台なので、グレッチの中ではビギナーにも使ってもらえるチャンスだと思っているんです。

内田 そうですよね。本当に最近、値段は関係ないなと思っていて。自分が欲しいサウンドだったら、値段は関係なくみんなに買ってほしいと思うんです。高価なギターにフィーチャーし過ぎるのも良くないなと。ただ安価なだけのギターをオススメするのは良くないと思うんですけど、最初は店員さんに弾いてもらったり、YouTubeにもたくさん動画が上がっているので、自分で音を聴いていいなと思うギターがあったら安くても絶対に買ったほうがいいと思います。あと、楽器を始める前にいいなと思ったサウンドってめちゃくちゃ大事だと思っていて。音楽を始める前やギターを始める前に“いいな”と思ったサウンドを忘れないために、自分が衝撃を受けた楽器を買ってほしいなと思いますね。

 

― 初期衝動を残しておくということですね。

内田 うん。それを忘れない。“最初はこれが好きだった”を忘れないために、自分の好きな音や見た目のギターを買ってほしいなと思います。

 

― 怜央さんの場合も、ギターの原体験はブライアン・セッツァーたちのライヴだったわけですからね。

内田 そうですね。あの時はCharさんがストラトを使って、布袋さんがテレキャスを使って、ブライアン・セッツァーはグレッチを使っていて。家にその3機が揃っちゃいましたね。ギターは楽器の中でも夢のある楽器なので、思い入れを注ぐのはすごく素敵なことだと思う。自分の好きな楽器を選んで買ってほしいです。

 

前編はこちら

 


Kroi

R&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華したミクスチャーな音楽性を提示する5人組バンド。メンバーは、内田怜央(Vo,Gt)、長谷部悠生(Gt)、千葉大樹(Kb)、関将典(Ba)、益田英知(Dr)。2018年2月に結成。同年10月、1stシングル『Suck a Lemmon』でデビュー。2021年6月には1stアルバム『LENS』でメジャーデビューを果たす。音楽活動だけでなく、ファッションモデルやデザイン、楽曲プロデュースなど、メンバーそれぞれが多様な活動を展開し、カルチャーシーンへの発信を行なっている。ニューアルバム『telegraph』を7月27日にリリース予定。

https://kroi.net