藤巻亮太 Special Interview -前編-

5月 24, 2022


 

グレッチはカルチャーと深く紐づいた最高の工芸品

 

2003年、レミオロメンのヴォーカル&ギターとしてデビュー。数々のヒット曲を放ち、2012年からはソロ活動を開始。地元・山梨で野外音楽フェス〈Mt.FUJIMAKI〉を主催するなど、精力的な活動を続ける藤巻亮太が登場。前編では、数奇な出会いを果たしたグレッチのCountry Gentleman、長年の憧れだったWhite Falconについて話を聞いた。

 

クリアなサウンドを鳴らす時のミッドローのリッチさは、グレッチならでは

 

― まずはグレッチとの出会いから教えてください。

藤巻亮太(以下:藤巻) 地元に親の知り合いのコレクターの方がいて、“ギターを全部手放すから買うか?”という話があったんですよ。2004年かな。そんなにギターを持っていなかったので、欲しいなと思ってひとまず見に行ったんです。そしたら、その中にグレッチのCountry Gentlemanがあって、弾いた瞬間に欲しいなと。ご縁だったと思うんですけど、フェンダーのStratocaster®️やCountry Gentlemanなどを何本か譲り受けて、その時に初めてグレッチのギターを手にしました。

 

― その前からグレッチの存在はご存知でしたか?

藤巻 もちろん知っていました。ベンジーさん(浅井健一)がBLANKEY JET CITYの曲をグレッチで弾いているのもすごく好きで、〈FUJI ROCK FESTIVAL〉のライブVHSを当時のレコード会社の人から借りて、テープが擦り切れるほど見ていました。細身のジーンズにグレッチがカッコいいなと思っていましたね。

 

― 譲り受けたCountry Gentlemanはどうでしたか?

藤巻 一気に何本も弾き比べたので、本当に“鉄を弾いている”ようなザラッとした感じがして、これはロックだなと思いました。速いパッセージでカッティングする曲を弾いてみたいなって。

 

― Country Gentlemanはけっこう使っていたのですか?

藤巻 ライヴとレコーディングで使いました。アップテンポな曲で使った思い出があります。特にリフやアルペジオで弾くのが好きでした。僕は3ピースでデビューをしたので、当時はギターでできることも少なかったんですけど、リフ一発で世界観を作るような楽曲も好きだったんです。リフものはグレッチがすごく気持ち良かったですね。ストラトやテレキャスにはない抜け感というか。あのザラッとしたロックな感じがカッコいいなと思って、リフを弾きたくなるようなギターでした。

 

― ギターのルックスも抜群にカッコいいですし。

藤巻 世の中には行き着いたデザインがあると思っていて、例えば車はずっとデザインが進化していくけど、ヴァイオリンのデザインは進化しない。ストラトやテレキャスも行き着いていますが、そういう意味でグレッチも一つのスタイルとして行き着いているんじゃないかと思います。

 

Ryota Fujimaki Special Interview B

 

― 今日は自身のグレッチを1本持ってきていただいていますが、このWhite Falconはいつ購入されたのですか?

藤巻 ソロになってから買ったんですが、一度は持ってみたいギターだったんです。ライヴで使うことが多くて、アップテンポなロック系の曲に使うことが多いです。最近使ったのは去年の配信ライヴで、音はもちろんですが、配信映えしそうだなと思って(笑)。

 

― 曲作りではあまり使わないですか?

藤巻 最近スタジオにアンプも入れてエレキを弾くことが増えてきたので、気分によっていろいろなギターを試しているんですけど…。確かに曲作りでトライしたことはなくて、いいヒントをいただきました。このWhite Falconで曲を作ってみるのは面白そうです。曲作りでその音に導かれるかもしれない楽器ですよね。うまく言葉にできないんですけど、耳を澄ましてあげると、“こういうところで弾いてほしいんだよね”と言っていそうなギターです。“こういう風に弾いてほしいな”とか(笑)。その声を聞いてあげられるとすごく良さそうだなって、今話していて感じました。何かが起きそうな不思議なギターですよね。分析して語れる感じじゃないというか、言語化できない。逆に言語化できない部分を、弾く側もグレッチのギターに求めているんだと思う。そこにすごく魅力があるというか。

 

― だからこそ可能性があると思うし、まだまだ表現しきれていない気もするのですが、藤巻さん流のグレッチの使い方を考えるとしたら?

藤巻 何でしょうかね。何かわからないけど“そうだよね、この感じ。この2022年に”っていう音を鳴らせそうなギターだなって思いました。とても抽象的なんですけど、それを探してみたいなって。言葉にするのが難しいなぁ(笑)。今って一筋縄ではいかないような時代じゃないですか。つまり、今僕が言葉にできないような何かに届きそうな音がしそうなんです。

 

― 細かく時代に合わせてきていないからこそ時代になり得る、超越したものになり得るみたいな。

藤巻 尖った部分まで振れ幅があるギターですよね。振れ幅の真ん中ぐらいの音はたくさんあるんだけど、振れ幅ギリギリのところに触れると、その時代の輪郭がわかるじゃないですか。その輪郭の手触りを持っていそうな感じです。外側ギリギリの、時代と時代の境目ぐらいの音がしそうなんです。その部分が、もしかしたらこれからのクリエイターにも何かインスピレーションを与えてくれるかもしれないですね。

 

後編に続く

 


藤巻亮太

1980年生まれ。山梨県笛吹市出身。2003年にレミオロメンの一員としてメジャーデビューし、「3月9日」「粉雪」など数々のヒット曲を世に送り出す。2012年、ソロ活動を開始。1stアルバム『オオカミ青年』を発表以降も、2ndアルバム『日日是好日』、3rdアルバム『北極星』、レミオロメン時代の曲をセルフカバーしたアルバム『RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010』をリリース。地元・山梨では2018年から野外音楽フェス「Mt.FUJIMAKI」を主催し、2022年は山中湖交流プラザきららにて10月1日、2日の2days開催が決定。

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