INORAN(LUNA SEA) Special Interview -前編-
4月 7, 2022
グレッチの音は・・・グレッチにしか出せない
INORANと言えばフェンダーのJazzmaster®️がトレードマークだが、1996年頃から使用しているグレッチもまた彼の壮麗なサウンドスケープを描く上で重要なファクターだ。SPECIAL INTERVIEWの前編では、グレッチとの出会い、今回の取材のために持参してもらったWhite FalconとSilver Jetについて話を聞いた。
曲がグレッチの音を選ぶのか、グレッチが曲を選ぶのか
― グレッチとの出会いは?
INORAN 20代はもうLUNA SEAをやっていたわけですけど、ヴィンテージにはまった時期があって。ヴィンテージの楽器や機材をアルバムのレコーディングに使う中で、当時、SUGIZOとよく行っていたヴィンテージギターの楽器屋さんにグレッチのTennesseanがあったんです。
― ボディがオレンジ色っぽいTennesseanですよね?
INORAN そうです。そのルックスが気に入って買ったのがグレッチとの出会い。使い始めたのは、アルバム『STYLE』(1996年)の「RA-SE-N」だった気がします。「RA-SE-N」ではずっとTennesseanを使っていたので。
― 初めてのグレッチはいかがでしたか?
INORAN このインタビューの結論になってしまうのですが(笑)、存在そのものが“グレッチの音”なので。言葉にするとチープになってしまうけれど、グレッチの音は・・・グレッチにしか出せないんです。
曲がグレッチの音を選ぶのか、グレッチが曲を選ぶのか。ギターがそうさせるのかはわからないけど、その曲はそれでしかなくなっちゃう。逆に言うと、だからこそ替えの利きかない音色なんですよ。レンジや許容範囲が広いということではなくて、グレッチにしか出せない音がある。
― 2007年のLUNA SEAのライヴ〈GOD BLESS YOU 〜One Night Dejavu〜〉の「BREATHE」でそのTennesseanを弾いている映像が観ることができます。この曲でTennesseanを選んだ具体的な理由は?
INORAN 結果的に、その場面や曲にスッと入ってこられるギターがグレッチだった、ということなんですよね。Tennesseanが入り口で、そのあとにGブランド(ボディトップにGと刻印されたモデル。50年代中期に採用)を買ったりもしたけれど、最初に「RA-SE-N」でフィットした時からグレッチはグレッチの音でしかないから、それを楽しみながら違う曲にもフィットさせていった感じですね。
White Falconは、既存の曲にスペシャルな音色を添えるための1本
― 今日は、ご自身のWhite FalconとSilver Jetを持ってきていただきました。
INORAN 買った順番で言うと、White Falconが先でSilver Jetがあとですね。White Falconは2010年代だと思います。ご存知の通りWhite Falconって素晴らしい名機で、憧れていた楽器だったので買いました。
― “世界で一番美しいギター”と言われているWhite Falconですが、INORANさんから見たWhite Falconはどうですか?
INORAN 本当に美しいですよね。繰り返しになりますが、自分にとっては限られた場面・曲で使用するギターです。例えば「THE BEYOND」とか、この間のツアー(LUNA SEA 30th Anniversary Tour 20202021 -CROSS THE UNIVERSE-)では「BREATHE」で弾いたり。既存の曲に、スペシャルな音色を添えるための1本ですよね。Tennesseanを買った頃はヴィンテージに目がいっていて、White Falconも最初はヴィンテージが欲しかったんですけど、フェンダーでエンドースしてもらってからは、ヴィンテージではない現行品でもいい音がするという概念が自分の中に生まれたので、現行品のWhite Falconを買ってみたら良かったという発見があった1本でもあります。Silver Jetに関しては、昔のグレッチのラメ(ボディ塗装)に憧れを持っていたのが頭に残っていたんです。例えば、真ちゃん(真矢)が持っているグレッチのヴィンテージのドラムの色とか、昔のあのラッカー塗装の感じが最高で。音も素晴らしかったので現行品を買いました。
― このSilver Jetはどういった場面で弾いていますか?
INORAN この間のLUNA SEAのツアーでも2014~2015年の「A WILL」のツアーでも使っています。だけど、まだレコーディングでは使っていないです。グレッチってすごく不思議な存在で、ヴィンテージの話をしちゃうと、ヴィンテージのGブランドも持っていて何回もレコーディングでトライしているんだけど納得いくものが録れないんですよ。なぜか俺に弾かせてくれないんです。55年製なんだけど、“お前はまだ弾けないよ”みたいな感じ。鳴らしきれないというか、いつもフィットしない。未だに1曲も弾いていないんです。この間のライヴでも試してみたのですが、そうでした。合わないわけではないんです。すごく教えてくれるんです。まだまだ修行が足りないのかなって。
― INORANさんをもってしてでも、まだ弾かせてくれないんですか?
INORAN そんなGブランドとTennesseanと、今日持ってきた現行品の計4本を持っていますが、他のギターと比べて興味深いというか、奥深いというか、不思議な存在のギターですね。
› 後編に続く
INORAN
ロックバンドLUNA SEAのギタリストとして1992年にメジャーデビュー。1997年よりソロ活動をスタートさせ、Muddy Apes、Tourbillonなどでも精力的な活動を展開。2010年にはフェンダーとエンドースメント契約を締結し、翌年に日本人アーティスト初のシグネイチャーモデル「INORAN JAZZMASTER® #1 LTD」を発売。その後も2013年に「INORAN JAZZMASTER® #2LTD, Masterbuilt by Dennis Galuszka」、2015年に「INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER®」、2017年にはソロ活動20周年を記念した「INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER® 20th anniv. Edition」、2019年には「INORAN JAZZMASTER® #1 LTD」をMADE IN JAPANラインで再現した「INORAN JAZZMASTER」など、多くのシグネイチャーモデルが発売されている。