Rei Special Interview -後編-

2月 10, 2022


Hair & Make-up : Haruka Miyamoto

懐が深く、初心者でも気持ち良く弾ける楽器

 

さまざまな音楽ジャンルを自由に行き来しながら、卓越したギタープレイとヴォーカルで魅せるシンガーソングライター、Reiがスペシャルインタビューに登場。後編では、2月に発売される新製品を試奏してみての率直な感想を、大きなギター愛で語ってもらった。

 

ビグスビーを揺らすためだけに買ってもいいと思います

 

― 前編に続いて、2本目のギターはG5422G-12です。12弦ギターですが、Reiさんが12弦を弾いている姿を拝見したことがない気がします。

Rei ええ。12弦ギターはほとんど弾いたことがないです。(試奏して)G5422G-12はデトックス効果がありますね(笑)。やっぱりサステインがしっかりとあるギターだからこそ、12弦ギターの美しさがちゃんと響くんだと思います。あと、このマンドリンみたいな独特な鳴りって、それこそケルト音楽とかワールドミュージックっぽいエッセンスを曲に入れたい時にもすごくいいと思うんです。本当にこれとベースと歌だけで1曲成立しそうなぐらい、すごくレンジの広い音がしますね。

 

― 今の試奏を聴いているだけでも、新しい曲が生まれてきそうな感じがします。

Rei そうですね。あと、私のグレッチの好きな仕様のひとつにポジションインレイがあるんです。ブロックインレイがスタンダードですけど、そこにコブができているハンプブロックと、あとはハーフムーンと言われる半円形のものやドットもあると思います。あるいはブロックとか、ハンプブロックの中に絵柄が描いてあるものもあるんですよ。このインレイもカワイイから、見た目的にはすごく好きですね。

 

― そして、3本目がシングルカットのG5420Tです。

Rei まず、フィニッシュにラメが入っていて華やかですね。音は3本の中でこれが一番好みです。すごく身の詰まった感じです。

 

― コシがあるというか。

Rei はい。これはより豊かなサステインとフィードバックの軽減を叶えるトレッスルブロックブレイシングなんですかね。グレッチのブレイシングも歴史と共に進化しているので、その隠れた向上心によって時代にフィットした音が誕生していると思うとなんだか感慨深いです。

 

― ええ。

Rei チェット・アトキンスがエンドーサーとして、50年代にジミー・ウェブスターと一緒にグレッチが開発したギター(通称Dark Eyes)を始めとする、飽くなき探究心は革新的だと思うんですよね。目には見えないことだけど、すごく音楽に反映されていると思うんです。こういうギターって、ハウリングがあるだけでかなり弾きづらいですよね。それがブレイシングだけで解消されたという点でもすごく革新的だったと思うし、かつ音の伸びもちゃんと補填しているところは目を見張るものがあります。ちなみにブレイシングの素材はスプルースですか?

 

― そうです。

Rei そうなんですね。そういう仕様の違い、ブレイシングもそうですし、Broadkasterのセンターブロックもそうですけど、見えていない中身の部分への配慮が音に反映されていると感じます。特にこのギターはボディの大きさとか厚みもあると思うけれど、そういうトレッスルブロックの良さがすごく感じられました。音が詰まっている感じとか。

 

― 音色的にはこのシングルカット(G5420T)が一番気に入ったと。

Rei はい。すごく素敵なギターです。キラキラ入っているフィニッシュって何て言うんでしたっけ?

 

― アジュールメタリックです。

Rei カワイイですね。初めてグレッチを持つ人にお伝えしたいのは、普通に1ポジでオープンコードを弾いて、ビグスビーを揺らすだけで気持ちがいいっていうことですよ。

 

― 確かに! それで成り立っちゃいますよね。

Rei 上手い人が弾いている楽器の印象が強いから饒舌に弾けないとダメ、みたいに私も感じちゃうのですが、懐が深いというか、初心者でも気持ち良く弾ける楽器なんだなっていうのを、今このアフォーダブルなモデルを弾いてみて思いました。ビグスビーを揺らすためだけに買ってもいいと思いますね(笑)。

 

Gretsch Rei 4

 

抱きしめてみたいという感覚で、ぜひグレッチを手にしてもらいたい

 

― この価格(G5420T:115,000円)ならそれでもいいし、部屋に飾っておくだけでもいいのかもしれません。

Rei 昨日、ちょうどギター好きの人とお話ししていて、すごく欲しいギターがあると。それを買いに行くためにReiちゃん付いてきてよって冗談で言うわけですよ。なぜかと言うと、楽器屋のおじさんがちょっと小難しい人で、あまり弾ける人じゃないとちょっと嫌な顔をするらしいんです。私は転売とかは断固反対するし、新品で買ってもっと高い値をつけて売り飛ばすとか、それは楽器に失礼だからやめたほうがいいと思う。でも、物としての美しさだったり、絵を飾るような感覚で買ったり、あとはその時代の音楽が好きで、そんなに弾けないけれどちょっと始めてみよう…と思う方にも気軽に楽器を持ってもらいたいと思うし、そこに想いさえ存在すれば誰しも楽器を持つ資格があると思うんです。美術が好きな人が絵画を買う感覚で楽器を買うのもアリだと思うし。そういう感覚で、音楽とか楽器に普段あまり関わりがない人でも、すごくカッコいいな、抱きしめてみたいなっていう感覚で、ぜひグレッチを手にしてもらいたいなと思いますね。

 

― 2022年はどんな活動をする予定ですか?

Rei 2021年の秋に、コラボレーションプロジェクトQUILT(キルト)を立ち上げました。キルトというのは、布と布の間に薄い綿を挟んで縫い合わせる技法なのですが、それになぞらえて私とアーティストの間に音楽があって、“それを縫い合わせてひとつの作品にしよう”というモットーのもと立ち上げました。第1弾として、藤原さくらさんと一緒に「Smile!」という曲を出して、12月に長岡亮介さんと一緒に「Don’t Mind Baby」という曲を出したばかりです。これからもQUILTのコラボレーションがたくさん控えているので、もちろんギターもたくさん弾いていますから注目してほしいです。あと、去年、自動車免許を取ったので、カッコいいギターを1本持って遠いところまでドライブに行きたいです。

 

― ドライブも楽しんでください。それにしてもギタープレイがすごいだけではなく、楽器の細かいところまで見てくれていて、楽器を作る側としてもとても嬉しい気持ちになりました。

Rei 音楽も簡単に曲を作っているように見えて、レコーディングのあとにミックスをしてマスタリングをしてやっと完成しています。楽器も同じで、1本のギターを完成させるまでにさまざまな工程がありますよね。丁寧に、自信を持ってものづくりをしている人の背景は、伝えていったほうがいいなと思っているんです。私もものづくりの哲学に敬意を払いながら楽器を使いたいですし。今日のインタビューでも話したような、オタク的な楽器の魅力を音楽というキャッチーなものに昇華して伝えたいという使命感もあります。自分のポップスを通して、楽器の奥深さに興味を持ってもらえたらいいなぁって。ついつい小難しい話をしちゃうんだけど、楽器の世界への間口を広げたい。私の音楽が、どこかの誰かが、初めての一本を手にするきっかけになれたら嬉しいです。

 

前編はこちら

 


Rei

卓越したギタープレイとヴォーカルを持つシンガーソングライター/ギタリスト。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターを始め、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1stミニアルバム『BLU』をリリース。FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVAL、ARABAKI ROCK Fest、SXSW Music Festival、JAVA JAZZ Festival、Les Eurockeennes、Heineken Jazzaldiaなどの国内外のフェスに多数出演。2017年秋、日本人ミュージシャンでは初となる「TED NYC」でライヴパフォーマンスを行った。2020年11月25日、専門学校 モード学園(東京・大阪・名古屋)CMソングの「What Do You Want?」、SOIL&“PIMP”SESSIONSとのコラボレーション楽曲「Lonely Dance Club」を含む2ndアルバム『HONEY』をリリース。2021年2月26日、1stアルバム『REI』のInternational Editionが、US/Verve Forecastレーベルより全世界配信。同年10月よりコラボレーションプロジェクト“QUILT(キルト)”を始動! 藤原さくらに続く第2弾として、長岡亮介(ペトロールズ)とのコラボナンバー「Don’t Mind Baby with 長岡亮介」を12月10日にデジタルリリース。

https://guitarei.com