Rei Special Interview -前編-
1月 27, 2022
Hair & Make-up : Haruka Miyamoto
グレッチはカルチャーと深く紐づいた最高の工芸品
さまざまな音楽ジャンルを自由に行き来しながら、卓越したギタープレイとヴォーカルで魅せるシンガーソングライター、Reiがスペシャルインタビューに登場。前編では、2021年の秋から急接近したグレッチのBroadkasterとの出会い、愛してやまないその魅力、そして2月に発売される新製品のインプレッションを聞いた。
クリアなサウンドを鳴らす時のミッドローのリッチさは、グレッチならでは
― 最近、SNSなどでもグレッチのギターと一緒のシーンを見かけますが、グレッチを手にするようになったのはここ最近ですか?
Rei 作品を作る前にテーマのギターを決めるのですが、今回は何にしようかな?と思った時、満を持して初めてのグレッチを持ちたいなと思い、ここ最近は一緒に活動していますね。
― グレッチはどんなイメージでしたか?
Rei カルチャーと深く紐づいた、最高の工芸品というイメージです。芸術品としても見ていて美しいし、技術的な面でも音への配慮が丁寧にされているギターだなと思っていました。あとは、憧れがありました。チェット・アトキンスやブライアン・セッツァーなど、自分が大好きなアーティストが使っているギターでしたので、いい大人になったらいつか一本欲しいなと思っていました。
― そして、今弾いているのが。
Rei Broadkasterです。
― Broadkasterを選んだ理由は?
Rei White Falconやチェット・アトキンスが開発した6120や6122とか、代表的なモデルがグレッチにはたくさんあると思うんです。これもグレッチの個性的な部分だと思いますけれども、ドラムも作っていますよね。もともとはドラムの名称だったんだけど、ギターとしてBroadkasterという名前で改めて出されたモデルで、いろいろなスペックの部分も気に入って手に入れました。
― 具体的に気に入っているところを教えてください。
Rei センターブロックが入っているのですが、スプルースという木材でできたセンターブロックで、ハウリングを防止するという効果もありますし、音のサスティンも長くなるという特徴が構造的に仕込んであるんです。あとは、フィルタートロンという1957年の夏の〈NAMM Show〉でグレッチが発表した伝説的なハムバッカーがありますけど、その進化型の“フルトロン”というピックアップが搭載されています。フィルタートロンは“フィルター”と付いているくらいなので、ノイズをフィルターするのですが、フルトロンはさらにパワーを上乗せしたサウンドを鳴らしてくれます。私の印象では、フルトロンのほうがもうちょっと凶暴というか、えぐみというかエッジがあって、そういう好きなピックアップが搭載されているのはお気に入りポイントのひとつです。
― 音色はどうですか?
Rei グレッチのサウンドの特徴である“品”を感じますね。もちろん、足元の音作りですごく凶暴になったりもするのですが、常にそこに品がある。特にクリアなサウンドを鳴らす時のミッドローのリッチさは、グレッチならではだと思いますね。
― 何か改良してほしい点はないですか?
Rei 他のギターだと、ピックガードを替えたりノブを替えたりよく遊びでやっているのですが、グレッチはここを替えたいなって、エステティック的にも不思議と思わないですね。私が書いている連載で、以前グレッチのギターについて取材させていただいた時、“これは誰がデザインしているんですか?”と聞いたことがあるのですが、そういうことを聞きたくなるくらい美術点が高いですよね。
― Broadkasterも何も改造せず、ですか?
Rei はい。手に入れたばかりだということもありますけど、まだ彼女のことを知ったばかりというか、私たちの人間関係というものを深めている途中なので、その中でもしかしたらちょっとカスタマイズする場面も出てくるかもしれません。
― 手にしたのはいつですか?
Rei 2021年の秋です。
― 数ヵ月ですね。現状はどんなシーンで使っていますか?
Rei 今は主にクリーントーンで弾くことが多いですね。楽器屋さんで新しいギターを手にする時に、決まった試奏フレーズが自分の中であるんですけど、そのひとつで、12フレット付近で弾いて鳴りを確認することがあります。そのあたりに行くといきなりサスティンが甘くなるギターもあるのですが、高いポジションでも伸びがいいし音が詰まらないんです。あと、9カポの曲でこのBroadkasterを弾くことがあるんですけど、アルペジオでもすごく響きがキレイで。指板を広く使っても、どこでも基本的に同じようなトーンで弾けるというのは、計算された楽器の証拠だと思います。
グレッチを持つ時は、ちょっとタイムスリップしているような気持ちになるんです
― Broadkasterはグレッチの中ではボディも厚くないし、小ぶりなタイプですが、女性の目線から見たグレッチはいかがですか?
Rei Broadkasterは少し小さめのボディですが、やっぱり美術点が高い、イコールファッション性も高いです。アクセサリーみたいな気持ちで持てるし、バインディングやゴールドパーツのディテールも端麗で、見惚れてしまいます。同じモデルでも、シルバーパーツとゴールドパーツがあったり、仕様が細分化されているところもグレッチならではだと思いますね。
― ルックスの部分も、そういう細かいところまで見ていただき感謝です。
Rei ピックアップは音で選ぶのが定説ですが、ルックスで選ぶのもアリだと思うんですよ。さっきフィルタートロンの話になりましたけど、その仲間に“ハイロートロン”というピックアップがあります。めちゃめちゃかわいいんですよ。ハイロートロンはピックアップにグレッチの“G”という文字が入っているんです。音で選ばないで、逆にピックアップをジャケ買いしてもらって、“こんな音がするんだ”っていう体験を楽しむこともあっていいんじゃないかと思いますね。
― 今のところ使っていただいているのはBroadkaster?
Rei そうですね。だけど、いろいろと弾いてみたいんです。チェット・アトキンスのモデルはもちろん、ブライアン・セッツァーやエディ・コクラン、エリック・クラプトンも6120(G6120 Nashville)を使っていますし、6122 Country Gentlemanはジョージ・ハリスンも使っています。あと、私も愛して止まないピート・タウンゼントも『Who's Next』や『Quadrophenia』でグレッチを使っているんです。ロックの歴史ともつながりがすごく深いし、やはり50年代のアメリカのカルチャー、ファッションともすごく強いつながりがあるんですよね。だから私もグレッチを持つ時は、ちょっとコスプレしているような気持ちにもなるし、タイムスリップしているような気持ちにもなるんです。女の子としては、そういう部分もちょっとワクワクします。
― ありがとうございます。そして、今日は2月発売の3本の新製品を弾いていただきます。基本的に3本ともピックアップは同じで、フィルタートロンもこのモデル用に新しく開発したものです。あと、ネックが今までよりも握りやすい、さらに削った新しいCシェイプになっています。ブレイシングは、トレッスルブレイシングではなく、“トレッスルブロックブレイシング”というものになっていて、より豊かに響くけれどハウリングはしないような新設計を採用しています。最初に弾いていただくのが、ボディがダブルカットのG5422TGです。
Rei 開放弦を交えた和音がすごくキレイだと思います。ちょっと浅めのダブルカットが、グレッチっぽいなと思いますね。他のこういうホロウボディのダブルカッタウェイだと、もうちょっと深さがありますよね。ちなみに、これはビグスビーのB60ですか?
― そうです。
Rei こういうちょっと幅のある大きめのホロウボディって、B60がすごく似合うと思うんです。すごくいいですよね。お値段はどれくらいですか?
― 13万円です。
Rei それこそ本当に憧れのギターとして、私も何回もグレッチを試奏しに行ったり、買いに行っていますけど、諦めて帰ってきているので(笑)、これぐらいの値段だったら一回本物のグレッチを弾いてみて、それでさらに恋したらもっとハイエンドのモデルを買うこともできますね。これほどのビジュアルだったりスペックがあるものを、この値段で実現しているのは本当にすごいと思いますし、よりオススメしやすいですよね。
― 弾いてみて違和感はないですか?
Rei 私にとってはちょっと弦高が高いので、それは調整したいと思います。でも、楽器としてはすごく鳴りはいいし、カントリーを弾いても良さそうな感じです。トレブルの一番高いところも明瞭で、丸さだけがあるとアンサンブルの中で弾いた時に抜けが悪くなったりするのですが、ボトムも担保されているけど、ちゃんときらびやかさも両立しているのは流石だなと思いました。
› 後編に続く
Rei
卓越したギタープレイとヴォーカルを持つシンガーソングライター/ギタリスト。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターを始め、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1stミニアルバム『BLU』をリリース。FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVAL、ARABAKI ROCK Fest、SXSW Music Festival、JAVA JAZZ Festival、Les Eurockeennes、Heineken Jazzaldiaなどの国内外のフェスに多数出演。2017年秋、日本人ミュージシャンでは初となる「TED NYC」でライヴパフォーマンスを行った。2020年11月25日、専門学校 モード学園(東京・大阪・名古屋)CMソングの「What Do You Want?」、SOIL&“PIMP”SESSIONSとのコラボレーション楽曲「Lonely Dance Club」を含む2ndアルバム『HONEY』をリリース。2021年2月26日、1stアルバム『REI』のInternational Editionが、US/Verve Forecastレーベルより全世界配信。同年10月よりコラボレーションプロジェクト“QUILT(キルト)”を始動! 藤原さくらに続く第2弾として、長岡亮介(ペトロールズ)とのコラボナンバー「Don’t Mind Baby with 長岡亮介」を12月10日にデジタルリリース。