佐々木亮介(a flood of circle)Special Interview -前編-

10月 1, 2021


革ジャンとBlack Falconを買った時からフラッドのスタイルが始まった

 

a flood of circleやTHE KEBABSなどのバンドでヴォーカル&ギターを務め、ロックシーンにおいて鮮烈な存在感を放っている佐々木亮介。皮ジャンとともに、彼のトレードマークと言えるのがグレッチ。特に愛用しているBlack Falcon とWhite Falconは、彼が生み出す音楽の根幹をも担う重要なパートナーだ。

そんな生粋のグレッチフリークである佐々木亮介にインタビューを敢行。前編では、グレッチとの出会い、グレッチが自身の活動に与えた影響、その魅力について話を聞いた。

 

Black Falconはひと目惚れ。有り金を全部下ろして買いました

 

― まずは、グレッチを使い始めたきっかけを教えてください。

佐々木亮介(以下:佐々木) グレッチに出会う前までは、フェンダーのTelecasterを使っていたんです。そのテレキャスは、初のフルアルバムを出す時、ちょっと気合いを入れて良いギターを買おうということで買ったんです。それまでは、質屋に売っているような8,000円のギターを使っていたんですよ。でも、8,000円のギターでメジャーデビューまでいけたんですよね(笑)。

 正直、いいギターにそんなに興味がなかった。で、ギターとベースが抜けて、新たにHISAYO(Ba)が加入して最初のライヴの時に、気合いを入れ直して新しいギターと服を買おうと思ったんです。まずは、その時に出演したイベントのギャラで革ジャンを購入(笑)。今日持ってきたグレッチのBlack Falconは、当時住んでいた中野の中古楽器屋で見つけてひと目惚れ。試奏しないで買ったんですよね。全財産の15万円、有り金を全部下ろして買いました。その時の気合いがずっと残っている感じですね(笑)。

 

Black Falconの存在は知っていましたか?

佐々木 知らなかったです。グレッチには、ザ・ビートルズのジョージ・ハリスンが使っていたDuo Jetなどいろいろなモデルがあるけど、このBlack Falconを弾いている先輩を見たことがないと思って、それも気に入って買っちゃったんですよね。ひと目惚れなので、どんな音が出るかは“まぁ弾けばわかるか”と(笑)。自分のヴォーカルもそうですけど、“こういうトーンが欲しい”と思っているわけじゃなくて、出た音をベストにするしかないと思っているタイプなので。

 

Black Falconはどうでしたか?

佐々木 そもそもボディが大きいから、景色が違うと思いました。ビグスビービブラートも見たことがなかったし。

 

― テレキャスと比べたらまったく違うギターですよね。

佐々木 全然違う。アコギとエレキくらいの違いがあって最初は戸惑ったし、特にBlack Falconってハイフレットをストラトのようにピロピロ弾くギターじゃないんですよね。そこも含めて、Black Falconで弾きやすいところに自然と手がいくようになるし、曲もそのようにできていきました。違いに驚いたけれど、その違いが楽しかったんです。このギターだから思いついた曲がいっぱいあるので、本当に運命的な出会いだったと思います。

 

― 生の鳴りも良いですか?

佐々木 楽屋で誰にも負けないんですよね。俺だけ“ジャーン!”ってアコギみたいに弾けるし、歌を歌ってもギターの音が聴こえるし、そこも良かったですね。

 

Sasaki A 2

自分のヴォーカルと似ていて、器用にやらなくてもいいし、できない

 

― もう1本のグレッチ、White Falconとはいつ出会ったのですか?

佐々木 それから何年か経って、グレッチは日本でも製造を始めたんですよね。Black Falconはアメリカで製造されているんだけど、日本製には日本のオリジナリティがあって、ボディが薄く内部にセンターブロックと呼ばれる板が入っていて、要するにあまりハウリングが起こらないようになっているんです。で、ギタリストが抜けた後ということもあって、レコーディングでリードギターを弾くようになったんですよ。ただ、Black Falconだとソロは弾ききれないと思って、もう少し弾きやすいギターはないかなと思っていたら、ちょうど日本製のWhite Falconが出たんです。しかも新作だったから、まさに誰も持っていないので、これだなと思って新品でゲットしたました。それが2015年ですね。実際、小ぶりなのも含めて弾きやすくなりました。

 

― グレッチのギターは何本お持ちですか?

佐々木 4本あります。紫色のブライアン・セッツァーモデル(G6120T-HR Brian Setzer Signature Hot Rod Hollow Body with Bigsby)と、シカゴにソロアルバムのレコーディングをしに行った時に買った、Streamliner Collectionというエントリーモデルのような1本です。

 

― その4本の使い分けは?

佐々木 Black FalconとWhite Falconはフラッド(a flood of circle)用です。ライヴではBlack Falcon、レコーディングの時はWhite Falconがメインです。紫のブライアン・セッツァーモデルはTHE KEBABSで使っています。Streamliner Collectionは家でデモを録る時などに使っていますね。

 

― メインの活動であるa flood of circleで、Black FalconWhite Falconの2本を使う理由は

佐々木 HISAYOが加入して、革ジャンとこのBlack Falconを買った時からフラッドのスタイルが始まった認識があって。他のギターを使おうと思わないんです。

 

― でも、合理性が高いギターじゃないわけですよね…?

佐々木 便利なギターではないですよね。Stratocasterみたいにピックアップセレクターで5段階の音が出るわけでもないし。ファルコンにもトグルスイッチはあるけれど、スイッチを替えても劇的にサウンドが変わるわけじゃないんです。でも、だからこそ迷わないんですよね。自分のヴォーカルと似ていて、器用にやらなくてもいいし、できない。まぁそれでいいかって。あと、みんな“グレッチってハウリングするでしょ?”って言うけど全然ハウらないです。

 

― 佐々木さんもそうですが、グレッチってある種の精神性を体現しているギターですし、アメリカ的なものを体現しているシンボリックなギターですよね。

佐々木 そうだと思います。だから個人的にはブライアン・セッツァーも大好きだけど、グレッチで一番驚いた使い方はジャック・ホワイトですよね。ボ・ディドリーモデルをビザールギターのように使っていて、音楽にもグレッチにもこだわるのに“そこはいいんだ!?”みたいな(笑)。そういうところが好きですね。

 

後編に続く

 


佐々木亮介

1986年、東京都出身。2006年、a flood of circleを結成。メンバーは、佐々木亮介(Vo, Gt)、渡邊一丘(Dr)、 HISAYO(Ba)、アオキテツ(Gt)。常にコンテンポラリーな音楽要素を吸収し進化し続け、最新のロックンロールを更新し続けているバンド。結成15周年となる2021年8月11日に、THE BACK HORN、SIX LOUNGE、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)、山中さわお(the pillows)、Reiが作詞作曲をし、a flood of circleがレコーディングをした前代未聞のアルバム、15th Anniversary Album『GIFT ROCKS』を発売。2018年には、新井弘毅(Gt,Cho)、田淵智也(Ba,Cho)、鈴木浩之(Dr,Cho)とともにTHE KEBABSを結成。

http://www.afloodofcircle.com