高橋響 Cody・Lee(李) SPECIAL INTERVIEW -後編-
1月 16, 2025
自分にとって、ギターは人生を豊かにしてくれる存在
幅広い音楽性と独特のサウンドでシーンを賑わせているCody・Lee(李)。ジャンルを超えた楽曲の多様性と自由な発想が多くのリスナーを魅了し続ける中、高橋響の緻密で繊細なバッキングギターはバンド全体のサウンドを支える重要な要素となっている。今回、グレッチのスペシャルインタビューに登場した高橋に、後編ではCody・Lee(李)の楽曲制作におけるギターの役割や、ライヴやアルバム制作を通して感じた挑戦と成長、さらには未来への抱負も伺った。
─ 高橋さんがギターを選ぶ時に重視しているポイントは?
高橋 まず、見た目は絶対に重要ですね。特にフジファブリックなど、自分が好きなミュージシャンが使っているギターに憧れるところから始まるので。それと、自分はバッキングがメインなので“音のまとまり”というか、弾いた時にバンド全体にどう馴染むか?を重視しています。言葉で説明するのは少し難しいですが、一発弾いた時に“これだ!”と直感的にイメージが湧くギターを選ぶことが多いですね。
─ 弾きながら歌うというスタイルでも、扱いやすいギターを選ぶ傾向がありますか?
高橋 自分はVの形のギターも持っていたりするので、必ずしも歌いやすさだけを基準にしているわけではないかもしれません(笑)。でも、和音のまとまり方にはすごくこだわっています。バンド全体で聴いた時に、音がしっかりと混ざり合う感覚が大事なんですよね。
─ Cody・Lee(李)は本当に幅広いタイプの曲がありますよね。その中でギターサウンドの位置づけは、どのように考えていますか?
高橋 自分は基本的に宅録で曲を作るのですが、アナログシンセなどもよく使うので、ギターは最後に入れることが多いんです。正直、“この曲、ギターいらないんじゃないか?”って思うこともあるんですよ。でも最終的にギターを入れることで、自分が好きだったロックバンドの雰囲気が加わる。その瞬間に“あ、これがCody・Lee(李)らしさだな”と実感しますね。ギターがあることで楽曲が完成するというか。そういう意味でもCody・Lee(李)にとって、ギターは欠かせない要素だと思っています。
─ ところで、この1年を振り返ってみてどんな年でしたか?
高橋 とにかく忙しかった、というのが一番の感想です。特に海外でのライヴが多くて、何回やったかも覚えていないくらい、いろんな国を廻りました。そのたびに新しい刺激を受け、自分にとってもバンドにとっても挑戦の連続だったと思います。並行して制作活動も続けていたので、本当にあっという間の1年でした。
─ 今年リリースされたセカンドアルバム『最後の初恋』ですが、ギターという視点から見るとどんなアルバムだったと感じますか?
高橋 バリエーション豊かな曲が揃っているアルバムなので、1本のギターだけではやり切れなかったと思います。僕が普段使っているギターはフェンダーのStratocasterとTelecaster、それからグレッチの Tennessee Rose(※)ですが、それぞれが活躍してくれました。
─ 力毅さんのギターのアプローチについて、高橋さんから見てどんな印象ですか?
高橋 力毅は、ジュディマリ(JUDY AND MARY)のTAKUYAさんが好きだと公言するように、とにかくヴォーカルの邪魔をしてくるんですよ(笑)。彼は“足し算”のタイプで、音だけでなく服装などもどんどん要素を加えていくスタイルです。僕はどちらかと言うと“引き算”でバランスを取るタイプなので、まず彼に自由にやらせてから、あとで整理するという感じですね。力毅のプレイは、もう少しギターらしい音を出してもいいのでは?と思うこともありますが(笑)、むしろ“ギターでギターらしくない音を作る”ことが彼の魅力。そういう独特のセンスは本当に面白いし、今回のアルバムでは特にそれがよく表れていたと思います。
─ 海外ライヴも積極的に行ってきましたよね。慣れない環境での演奏は大変だったのでは?
高橋 本当に大変でした(笑)。台湾で鉄の柵の下に降りて歌ったときは、公演中に大雨が降っていて、その柵に触れた瞬間感電してしまったんです。マイクにも電流が流れていて、かなり危ない状況でした(笑)。そういったイレギュラーな出来事が多かったため、対応力の必要性を強く感じました。この1年でかなり鍛えられたと思いますが、来年はさらにその対応力を高めていきたいです。
─ 高橋さんご自身では、この1年でどんな取り組みをされてきましたか?
高橋 今年、結婚したんですよ。なので、自分にとっては結婚が大きなテーマの1年でした。これ、他ではまだ全然話していないことなのですが、妻はもともと音楽のアドバイスをくれる人で、今回のアルバム制作でもいろいろ助けてもらいました。例えば、自分が曲を書く気力が湧かない時に“好きなコードを教えてくれ”と頼んで、そのコードを基に曲を作ったこともあります。そういったサポートのおかげで、アルバム制作に良い影響を与えてもらえたと感じています。
─ では、2025年の抱負をお聞かせください。
高橋 大きな目標として、まず5月に控えている日比谷野音でのワンマンライヴがあります。ミュージシャンとして野音に立てるのは、一つの夢でもあり、バンドにとっても大きなターニングポイントになると思っています。このライヴをどう迎え、どう終えるかがCody・Lee (李)にとって来年最初の大きな課題ですね。日比谷野音のライヴ以降も国内外でさまざまな予定が控えているので、そのすべてに向けてバンドとしての力をつけていきたい。特に、これまでの海外での経験を活かして、どんな環境でも良い音を出せるようになりたいですね。
─ 個人的に、これから挑戦してみたいことはありますか?
高橋 音楽の幅をもっと広げていきたいと思っています。この間、詩羽ちゃん(水曜日のカンパネラ)との対バンライヴで吉田一郎さん、BOBOさん、日野ジャクソンさんの演奏を見たんですけど、みんな自分がすごく好きなミュージシャンだったので、“この人たちと一緒にプレイして歌いたい”という気持ちが自然と芽生えました。そういった挑戦を通じて、外で得た刺激をCody・Lee(李)に持ち帰ることができたら、きっと素晴らしい影響になるだろうなと思っています。
─ では最後に、これからギターを始めたいと思っている人へのメッセージをお願いします。
高橋 自分にとって、ギターは人生を豊かにしてくれる存在です。もしギターを弾いていなかったら、生きる意味を見失っていたんじゃないかと思うほど大切なものです。そんなギターが、皆さんにとっても同じように人生を彩る存在になればいいなと思っています。もちろん練習は大事ですが、それ以上に“音楽を楽しむ”という気持ちでギターに触れてほしい。息抜きとしてギターを弾くのもいいですし、その楽しさが結果的に行き詰まりを解消してくれることもあると思います。
─ 高橋さんにとって、“楽しむこと”がギターとの向き合い方の原点なんですね。
高橋 もちろん、練習を否定するつもりはありません。練習が好きな人もいますし、それでモチベーションが上がるなら素晴らしいことです。ただ、僕自身は“音が鳴ってリズムがあるだけで楽しい”と感じるタイプです。ギターはそうした楽しさを加える、いわば冒険の剣のような存在ですよね。とにかく、ギターを持っている方もこれから始める方も、まずは“楽しむこと”を目指してほしいです。
左:Electromatic® Jack Antonoff Signature CVT Double-Cut
右:Tennessee Rose※(本人私物)
※商標再取得にともない、2024年9月よりTennessee Rose™からTennessean™へ製品名を変更しております。
Cody・Lee(李)
2018年、大学の友人同士で結成。メンバーは、高橋響(Vo,Gt)、力毅(Gt,Cho)、ニシマケイ(Ba,Cho)、原汰輝(Dr,Cho)。東京を拠点にライヴを行い、ロックファンの口コミからジワジワと注目を集め、2020年には自主レーベル「sakuramachi records」(高橋の出身地・岩手県の地名から命名)立ち上げ。年末にリリースしたアルバム『生活のニュース』のリード曲「我愛你」のミュージックビデオが台湾・アメリカを中心に世界中で話題を呼び、900 万再生を突破。
2021年に入り、映画『サマーフィルムにのって』主題歌に抜擢された「異星人(エイリアン)と熱帯夜」などを立て続けに楽曲を配信リリースし、国内での認知が高まる一方、海外ではラスベガス出身のラッパー兼プロデューサー[1NONLY]が「我愛你」をサンプリングした「COME THRU (feat. Shady Moon & Ciscaux)」が現地でスマッシュヒット。ミュージックビデオへの支持も重なり、世界各地にリスナーの層を拡げることになる。
2022年、ニューヨークを拠点にするコレクティブ88rising から「88rising radio ROOKIE CLASS OF 2022」としてフックアップされるなどバンドとしての勢いが増す中、5 月にメジャーデビューアルバム『心拍数とラヴレター、それと優しさ』をリリース。夏に開催した全国ツアーはファイナルの渋谷O-EASTを含む全8公演がソールドアウトし、〈FUJI ROCK FESTIVAL〉など大型音楽フェスティバルにも多数出演。10 月からはCody・Lee(李)+ミュージシャン[MONO NO AWARE / 水曜日のカンパネラ/時速36km/chelmico]+芸人[松本クラブ/ 9 番街レトロ/ 真空ジェシカ]による全国スリーマンツアーを開催。
2023年2月、台湾・台中で開催される音楽フェスティバル〈浮現祭 -Emerge Fest-〉に出演。自身初の海外公演ながら、メインステージのセカンドヘッドライナーとして、超満員の観客から熱烈な歓迎を受ける。また、4月からスタートするテレビアニメ『江戸前エルフ』にエンディングテーマを書き下ろし。5月からは東京・EX シアターを皮切りに、自身最大規模の全国ワンマンライブツアー〈こnにちはせいかつ。TOUR〉を開催。
2025年、3月21日(金)東京キネマ倶楽部にて対バン企画〈Cody・Lee(李) presents ようこそ!すももハイツへ 3LDK -2025-〉、5月25日(日)日比谷公園大音楽堂にて〈Cody・Lee(李) Live at 日比谷野音〉を開催。