後藤輝基(フットボールアワー)SPECIAL INTERVIEW -前編-

6月 2, 2024


 

メンバーの一員に見えるぐらい、他のギターにはない存在感がグレッチにはある

 

テレビのバラエティ番組でギターを弾く姿を目にした人は少なくないだろう。ネタ要素もあるものも含め、音楽活動にも意欲的に取り組むお笑い芸人、フットボールアワーの後藤輝基がインタビューに登場。前編では、熱心な音楽ファンであると同時に大のグレッチファンでもある後藤が並々ならぬ“グレッチ愛”を語ってくれた。

 

― 後藤さんがギターを始めたきっかけは、お父さんだったそうですね?

後藤輝基(以下:後藤) そうですね。常に機嫌の悪い親父が、ギターを弾いている時だけは機嫌が良かったんです。親父の部屋からギターの音が聴こえてくると、“今日は機嫌が良さそうやな”みたいなところで、ギターの音というのは幼い頃から刷り込まれていると思います。

 

― 後藤さんご自身がギターを手に取ったきっかけは?

後藤 学校の授業でギターがあったんですよ。親父が弾いているやつやんなと思いながら、弾いてみたら、ちょっとハマったんです。親父はクラシックギターでしたけど、それとは別にうちのおかんの兄貴、つまりおっちゃんが昔弾いていたエレキギターがあって。姉ちゃんが弾こうとしたけど、結局挫折してっていう。それを弾き出したのが中学2年でした。

 

― 学校の授業で弾いた時、どんなところにハマったんですか?

後藤 聴くものだという感覚だった音楽を、自分で鳴らすんやみたいなところは大きかったと思います。ただ最初はフォークから入ったので、エレキギターがギャーン!って雷が落ちるみたいなことはなかったですけどね。よく言うじゃないですか。ラジオからロックが流れてきて雷が落ちたって。そこまでの衝撃はなかった。なんかゆる~く、ずっと電流が流れている感じというか。で、ギターの弾き方を段々覚えていって、同時にその電圧も増えていってみたいな。もちろん、後にエレキギターに出会って、やっと雷が落ちるみたいなのはありますけどね。“グレッチのウェブサイトに何で後藤が出とんねん”と思う人もいるかもしれないし、僕自身、レジェンドと言われる人たちと同じ並びで、こうやって話をさせてもらうなんて恐れ多いところもありますけど、それでもやっぱり“グレッチ愛”は誰にも負けへんぐらいあるんですよ。

 

― その“グレッチ愛が後藤さんの中に芽生えたきっかけは、やはり浅井健一さんですか?

後藤 そうです。浅井さんがグレッチを弾いている姿にシビれたんです。そこからグレッチのことを調べまくって。それは今もですけどね。これまでグレッチのギターを所有してきた本数で言うと、なかなかじゃないですか。

 

― 何本ぐらい所有されていますか?

後藤 手放したものも含めてですけど、Falconのホワイトとブラックでしょ。Penguinのホワイトとブラックでしょ。Tennesseanでしょ。Bo Diddleyが4本でしょ。Billy-Bo Jupiter Thunderbirdでしょ。6120のダブルネックでしょ。Duo JetのSPARKLEでしょ。あとRancherのホワイトとブラック。しかも、Rancherのブラックがまだ出ていない時にブラックを作ったんですよ。

 

― ええっ。

後藤 工房に持って行って“黒に塗ってくれ”って。その時に調べてみたんですけど、昔のRancherってピックガードをネジで止めてるんですね。だからダミーでネジをつけてくれって。それで何年か経ったら公式からまったく同じ仕様で出てるから、“いやいや、俺もうやってたぞ”って(笑)。

 

Goto Special Interview A2

 

― グレッチよりも早かった(笑)。さて、本日は4本持っているBo Diddley1本を持ってきていただいているのですが。

後藤 グレッチファンでもBo Diddleyを持っている人は少ないと思いますよ。

 

― そう思います。後藤さんはBo Diddleyのどんなところに惹かれたんですか?

後藤 浅井さんやストレイ・キャッツが好きだったりするから、もちろんFalconにいったりヴィンテージを探して、Tennesseanにいったりっていうのは経てますけど、いわゆるホロウボディって、それを持つ目的というか、出したい音がしっかりとないと全然音が鳴らない。もちろん、それは僕の扱い方がおかしかったからだと思うんですよ。フォークのことしかわからない状態で手に取りましたから。もったいないことしたって今は思うんですけど、結局、手放しちゃうということを経て、段々ソリッドボディに目が向きはじめ、Penguinだったら使いやすいぞって。もちろんPenguinを持っている人もそんなに周りにはいなかったんですけど、さらに調べていったらBo Diddleyってギターがあるんだ。しかも、そんなに持っている人も多くない。調べたらアーティストの方で何人か使っていたんですけど、それでも、ええなと思って、買ってすぐに出しました。

 

― あ、工房に。

後藤 ええ。正規品の真っ赤なやつももちろんいいんですけど、自分流のBo Diddleyを作りたいと思って、ボディの色もバインディングも変えてもらいました。もともとはGテイル含め、全部ゴールドパーツなんですけど、それも取ってビグスビーを入れて。ビグスビーも普通のテイルピースにつけるやつじゃなくて、せっかくフラットトップなんだからってはめ込み式のものを載せたんです。

 

― ピックガードも加えていますね?

後藤 作りました。ボ・ディドリーが自分のギターに付けていたんですよ。ピックガードの概念が正規品にはまったくないんですけど、カッコええなと思って。だからまったく同じ長方形。ただ、“じゃあボ・ディドリーの音楽に精通してるか”って言ったら僕はしてないです。ロックの草分けの存在だってことは、もちろん知ってますけど。

 

― ボ・ディドリー云々ではなく、彼が使っていたギターのルックスが純粋に気に入ったと。

後藤 そうです。そのカッコ良さを自分なりにアレンジしてということですよね。ギターの成り立ちもカッコいいじゃないですか。金がないから葉巻の箱に棹を差して、弦を張ってっていう、いわゆるシガーボックスギターが元になっている。そんなところもカッコええなって思います。

 

― そんな後藤さんにとって、グレッチギターの魅力はどんなところでしょうか?

後藤 すごく原始的なギターのイメージなんですよ。Falconなんかもそうなんですけど、そこにメカニカルなごっつい部品がガガガガガガって付いてる、そのギャップがもうたまらない。しかも、バンドになるとグレッチのギター自体がメンバーの一員に見えるんですよ、ほんまに。それぐらい他のギターにはない存在感がある。例えばBLANKEY JET CITYにとって、浅井さんのTennesseanはアイコンとしてもはや不可欠じゃないですか。もちろん、浅井さんの体の一部っていうふうにも見えるんですけど、僕にはやっぱりメンバーの一人に見えるんですよね。ブライアン・セッツァーのFalconも、ストレイ・キャッツを見てもブライアン・セッツァー・オーケストラを見ても、やっぱりメンバーの一人に見える。こんな音作りもできるし、あんな音作りもできるっていう利便性の高さという意味では、グレッチって懐は深くないと僕は思うんですよ。でも、それがいいというか、もうそれでしか使われへんというか。それを愛でている人はカッコいいなって思います。

 

Goto Special Interview A3

 

左:G6609TG Players Edition Broadkaster Center Block Double-Cut with String-Thru Bigsby

右:Bo Diddley(本人私物)

 


 

後藤輝基

NSC大阪校14期生。1999年4月、フットボールアワーを結成。相方は岩尾望。2000年に『第21回 ABCお笑い新人グランプリ』で最優秀新人賞、2001年に『第32回 NHK上方漫才コンテスト』最優秀賞を獲得。『M-1グランプリ2001』の決勝にも進出し、2002年に準優勝、2003年に優勝を果たす。吉本興業制作の映画『ニュース』では監督を務め、自身も出演している。趣味はハーモニカ、料理、特技はギター。音楽活動としては、2022年5月に藤井隆の全面プロデュースにて初のカヴァーアルバム『マカロワ』をリリース。2024年05月17日にはカヴァーアルバム第二弾『ホイップ』をリリース。6月から〈後藤輝基“ホイップ”ツアー2024 plus 藤井隆!〉を開催。

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