菅波栄純(THE BACK HORN)SPECIAL INTERVIEW -前編-

4月 22, 2024


 

Nashvilleを弾きこなせるようになったら、俺はもっとカッコいいギタリストになれる

 

結成から26年、日本屈指のライヴバンドという地位を揺るぎないものにしながらもなお新たな可能性を追求することに挑み続けている4人組ロックバンド、THE BACK HORN。“KYO-MEI”という言葉をテーマに、聴く人の心を震わせる音楽を届けることをバンドの意思として掲げる彼らの激情あふれるサウンドを印象づけているのが、菅波栄純のギタープレイだ。その菅波がグレッチのスペシャルインタビューに登場。前編では音楽との出会いや、今回試奏したG6620TFM Players Edition Nashville Center Block Double-Cut with String-Thru Bigsby and Flame Maple, Filter'Tron Pickups, Orange Stain(以下:Nashville)のインプレッションを語ってもらった。

 

― まずは音楽との出会いから教えていただけますか?

菅波栄純(以下:菅波) 小学4年生の時に自分で作った曲を聴いてみたいという気持ちになって、歌詞を書いて、鼻歌でメロディを付けた時が自分の音楽のスタートでした。元々、小さい頃から何かを創作することに興味があって、最初は漫画だったんですけど、次なる創作の舞台は音楽だみたいに移り変わったんです。自分にとって音楽の原点は作るものというか、聴くことにハマる前に作ることにハマったので、そこの順番は人とは違うかもしれないですね。だから、最初に欲しくなったのはCDよりもテープレコーダー。祖母の家が自分の実家に隣接してあったんですけど、祖母のテープレコーダーを勝手に使って、そこに自分の歌を吹き込むということをやっていました。

 

― その後、曲を作るには楽器が必要だとなったんですか?

菅波 そうなんですけど、最初、曲を作るならって楽器屋さんに薦められて、リズムマシーンを買ったんですよ。でも、ギターを弾き始める友達が現れたり、友達の兄ちゃんがギターを弾いているのを見たりしているうちに、ギターを弾きながら作った曲を歌うのが一番カッコいいと気づいて、高校1年の時に親にギターを買ってもらったんです。その頃には友達の影響でバンドを聴くようになっていました。バンドを好きな人が周りに多かったからかもしれないですけど、単純にカッコいいからっていう理由だけでバンドという形に興味が湧いていきました。あと、Hi-STANDARDを筆頭に日本のインディーズバンドが盛り上がってきた時期だったのも大きかったと思います。そこからやっと曲をコピーする楽しさや他の人と演奏する楽しさを知るんです。コピーは友達や弟とHi-STANDARDとかニルヴァーナとかBLANKEY JET CITYとかやっていました。

 

― 菅波さんはもうかれこれ25年、メインとしてグレッチのG6131 Jet Firebirdを使い続けていますが、菅波さんにとってグレッチというブランドの魅力とは?

菅波 グレッチのギターって本当にセンスがいいと思います。デザイン的にすでに完成されている。グレッチって何年に生まれたんでしたっけ?

 

1883年です。去年が140周年の年でした。

菅波 グレッチってもう最初から色彩のセンスがモダンな気がしているんですけど、たぶんギタリスト界隈ではみんなそれは思っていて、誰と話しても“めっちゃカッコいいよね。まずは見た目が”って言いますよね。そこはもう共通認識としてあると思うんですけど、音に関しては、自分が最初に思い出すのはベンジーさん(浅井健一)なんです。自分が最初に影響を受けたギターサウンドでもあるんですけど、自分でもグレッチを使い始めた時、憧れの人と図らずも同じ土俵に立ってしまったという後悔が正直ありました(笑)。でも、そこである意味で反発心が芽生えて親を超えるぐらいの気持ちにならないと、ギタリストとしてやっていけないと思って。自分がイメージするグレッチとは真逆の音でやろうって、コードを弾いたら音が潰れて何を弾いているのかわからなくなるくらい歪ませたんです。そうやって自分を確立したいっていう反抗期みたいな時期が最初5年ぐらいあって、メジャーデビューしてからもしばらくそんなスタイルでやっていました。その甲斐あって、自分なりのグレッチサウンドが作れたと思うんですけど、それは歪ませたギターサウンドを他のメンバーが埋めてくれることによって成立したものではあるので、自力ですべて消化したわけではないという自覚はあります。

 

Backhorn Suganami 2

 

― さて、ここからは本日試奏していただいたNashvilleのインプレッションを聞かせていただけますか?

菅波 弾いた瞬間、これだって思いました。実はもう1本、試奏させてもらったG6609TG Players Edition Broadkaster Center Block Double-Cut with String-Thru Bigsby and Gold Hardware, USA Full'Tron Pickups, Vintage White(以下:Broadkaster)のほうが前もって調べてみたら、絶対に俺好みだったからちょっと悩みましたけど、Nashvilleを弾いた瞬間これがいいと思っちゃったその直感には逆らえなかったですね。

 

― これだと思ったポイントは?

菅波 最初にクリーンで弾いた時から音がワイルドだったんです。新しいギターを求めるなら、やっぱりすでに持っているギターとは違うものに出会いたいじゃないですか。その点、Nashvilleは弾いた瞬間の鈴鳴り感もすごかったし、自分が持っている楽器に対して少し暴れる感じもあって。もしかしたら伝わらないかもしれないけど、暴れているほうが面白いというか、“これどうしよう”って思うもののほうが愛着が湧くんですよね。G6131 Jet Firebirdを買った時も、自分の弾き方と相性が悪くて、しばらくは“これ間違ったかな”って思ったんですよ。でも、もうちょっとこいつと付き合ってみるかって弾いていたんですけど、そうするといろいろと思うところもあって、逆に自分の好みを変えられちゃって(笑)。俺、何をするにせよ、半分ぐらいちょっとズレているようなものを選ぶんです。それを考えるとBroadkasterは、自分の好みにぴったりすぎたのかもしれない。バンドの中のこの位置に置けるって、もうわかっちゃったというか。逆にNashvilleはTHE BACK HORNに合うかな?みたいな。それが良かったんですよ。たぶんこれ“ザ・グレッチ”の音をしてるんです。鈴鳴り感と低音の太さ、その両方がある。歪ませるとキンキンってところも出てきちゃって、それが好きか嫌いかはけっこう分かれるところだと思うんですけど、俺はグレッチを歪ませた音が大好きで。そのキンキンっていう音が鳴っちゃうところが俺の中ではワイルドに感じるんです。“これを弾きこなせるようになったら、俺はもっとカッコいいギタリストになれる”、そう思わせるのが俺にとってのグレッチのギターなんですけど、Nashvilleはそれをすべて持っていた。しかも、ビジュアルとしても最高にカッコいいギターだと思います。

 

― 菅波さんのG6131 Jet Firebirdのヘッドにはホースシューと言われる蹄鉄型のインレイが入っていますが、Nashvilleのヘッドインレイもホースシューですね。

菅波 あぁ、意識していなかったけど、Nashvilleを選んだのはそれもあるかもしれない。一目惚れって0.5秒でしているって言いますからね(笑)。

 

― 今後、どんなシーンで使えそうですか?

菅波 このワイルドなサウンドはレコーディングで重宝すると思います。うちのドラマーとベーシストが使っている機材とかプレイって、けっこうモダンなんですよ。だから、それだけでわりとモダンな雰囲気に仕上がるんですけど、俺はいなたい音が本当は好きなんです。だから、ギターでいつも汚し役になるんですけど、打ち込みの音も入れている最近の流れもあって、ギターもモダンなサウンドに寄せているんですけど、そろそろ暴れたいという気持ちがけっこうあって。ギターソロを入れようってなった時とか、ちょっとクランチを入れたい時、Nashville で弾いてみようっていうのがまずは浮かびますね。今、バンド界隈の流行りもいなたいほうにまた戻ってきている気がして、モダンでハイファイで打ち込みか生演奏かわからないみたいなサウンドにみんな若干飽き始めているんじゃないかな。バンド界隈でもまたワイルドなギターを聴きたい時代がちょっと近づいているので、もしかしたら、そういう意味でも主役になっちゃうかもしれないと思います。

 


 

菅波栄純

4人組バンド、THE BACK HORNのギタリスト。メンバーは、山田将司 (Vo)、岡峰光舟 (Ba)、松田晋二 (Dr)。1998年結成。2001年、シングル『サニー』をメジャーリリース。〈FUJI ROCK FESTIVAL〉や〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉などでのメインステージ出演をはじめ、近年のロックフェスティバルでは欠かせないライヴバンドとしての地位を確立。そして、スペインや台湾ロックフェスティバルへの参加を皮切りに10数カ国で作品をリリース。黒沢清監督映画『アカルイミライ』(2003年)主題歌「未来」をはじめ、紀里谷和明監督映画『CASSHERN』(2004年)挿入歌「レクイエム」、乙一原作『ZOO』(2005年)主題歌「奇跡」、アニメ『機動戦士ガンダム00』(2007年)主題歌「罠」、水島精二監督映画『機動戦士ガンダム00 -A wakening of the trailblazer-』(2010年)主題歌「閉ざされた世界」、熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画『光の音色 –THE BACK HORN Film-』、作家・住野よるとコラボレーションした小説×音楽の話題作「この気持ちもいつか忘れる」など、そのオリジナリティ溢れる楽曲の世界観から映像作品やクリエイターとのコラボレーションも多数。結成25周年を経た今も、日本屈指のライブバンドとしてその勢いを止めることなく精力的に活動し、7月より〈THE BACK HORN「KYO-MEI対バンツアー」〜共鳴破天の夜〜〉を開催。

 

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