宮崎一晴(クジラ夜の街)SPECIAL INTERVIEW -前編-
10月 4, 2024
Jetは僕にとって音叉みたいな存在
“ファンタジーを創るバンド”をコンセプトに掲げてリスナーに未知の体験を提供する、クジラ夜の街。その言葉通り、世界観が確立された楽曲やライヴパフォーマンスで魅了し、シーンで頭角を現している。そんな次世代を担うロックバンドから、ヴォーカル&ギターの宮崎一晴が登場。前編では、ギターを始めたきっかけやグレッチとの出会い、今回試奏したG5420T Electromatic® Classic Hollow Body Single-Cut with Bigsby®(以下:G5420T Electromatic)のインプレッションについて伺った。
― ギターを始めたきっかけを教えてください。
宮崎一晴(以下:宮崎) サカナクションやKANA-BOONといったロックバンドがテレビに映っているのを見て、自分もやってみたいなと思って。父親も楽器への愛が強かったので、中学2年生のときに赤いセミアコを買ってもらいました。選ぶときは父がノリノリでしたね(笑)。
― ギターを入手してどんな練習をしましたか?
宮崎 練習というより、とにかく早く曲を作りたかったんですよ。なので、家にあった教本を見て主要なコードを覚えて、さっそく曲作りをしました。
― コピーから入る人が多いので、いきなり曲作りというのはすごいですね。
宮崎 コピーはあまりやりたくなくて。曲を作ってみたいという気持ちが先行していたので、デタラメにコードを弾いて“このコードはこういう順番で弾くと面白いんだ”“違うフレットでEを弾いたら不穏な感じになるんだ”とか、遊びながら実験していた感じです。あと、ギター用のオーディオインターフェースを買ってiPhoneのGarageBandにギターの音を入れたり、曲作りのために弾きまくってました。
― では、挫折も特になく?
宮崎 ギターに関してはなかったですね。僕にとってギターはとにかく楽しいものだったし、楽器自体を鳴らす面白さもあったんですけど、歌を作ることを手助けしてくれるものというイメージが強くて。一緒に歌ってる感覚が楽しかったですね。
― 初めて作ったのはどんな曲でしたか?
宮崎 Emコードから始まるちょっと暗めで速いマイナー調の曲ですね。セミアコの生音で録った音源を中学の友達に聴かせてました。同じ吹奏楽部にいた友達がドラムをちょっとだけできたので、その曲を一緒にセッションして。武蔵野プレイス(公共施設)に市内の青少年が200円で使えるスタジオがあって、そこで初めてアンプをつないでギターをデカい音で鳴らしたんですよね。
― 高校では軽音楽部の強豪校に入り、クジラ夜の街を結成するわけですが、最初から曲作りができたのは強味になったのでは?
宮崎 そうですね。“俺すごいじゃ~ん”って自分に酔ったりして(笑)。曲作りを早めに始めておいたのは自信につながりましたし、音楽人生にとって大きかったです。
― 高校は軽音楽部目当てで選んだんですか?
宮崎 そうです。中2で曲を作って“これはずっとやっていこう”と思ったんですけど、人との関わり合いの中で創作物を作るのに憧れがあって。でも中学では本気で音楽をやりたい人が周りにいなかったので、本気度の高い人たちと曲を作りたいと思って軽音楽部が強い学校に行きました。
― プロを意識したタイミングはいつですか?
宮崎 最初は高2の夏ですかね。全国大会でベスト4になれて、ふわっと意識し始めたんですけど、それを後押ししたのが2ヶ月後の文化祭。後夜祭で体育館でライヴをしたんですけど、それまで軽音楽部関連の人とか、もともとバンド好きな人の前でしか演奏してこなかったのが、初めて音楽を知らない人も含めた大勢の前で演奏しました。うちの部活はコピー曲禁止だったのでオリジナル曲をやったんですけど、大盛り上がりしたんですよね。大サビでみんなが歌ってくれたときに、自分たちの音楽が通用する可能性があるぞと思って。
― 現在のグレッチはいつから使っているんですか?
宮崎 最初のセミアコが高3の文化祭で壊れて。その前に〈RO JACK〉(ロッキング・オンが主催するバンド/アーティストのオーディション)で優勝して賞金をみんなで山分けしていて、10万円が手元にあったので、初めて自分のお金でギターを買いました。それが今使っているJetです。
― そこでグレッチを選んだのはどうして?
宮崎 楽器屋巡りをしたときに、煌々と光るものを感じたんですよね。グレッチという名前も椎名林檎さんの「丸ノ内サディスティック」で知っていたし(笑)。でも、意外と同世代で使っている人は少なくて、そういう面で渋いし個性もあるし妖艶でもある。とにかく大人の色気を感じるブランドだなと思いました。そこにも惚れましたし、試奏してみたらキラッとした音で、でもちゃんと分厚さもありドンシャリでもあって…コードを鳴らしたときのきらびやかな感じが刺さりました。
― 見た目も決め手になりましたか?
宮崎 はい。赤と白と青が好きな色で、赤が一番好きなんですけど、赤いギターってステージで絶対に映えるというか。いろんな色の光が飛び交うステージでも、このギターを持っていけばどっしりとブレずにそこにいることができる。そういう意味でもJetを愛しています。
― どんな場面で活用していますか?
宮崎 ライヴではもう一本のギターと半々くらいで使っていますし、レコーディングでも重宝しますね。ギター選びで行き詰まったときに鳴らしてみると、“これが一番いいね”ってエンジニアにも言われます。なので、“迷ったらこれ”という切り札感がありますね。オールマイティで何でもできちゃうので、頼りがいがあるギターです。
― 今回の試奏でも1本を決めるのに迷った際、ご自身のJetを弾いていましたね。
宮崎 座標になってくれましたね。これを弾くと他のギターの特色も理解できるので、僕にとって音叉みたいな存在です。でも最初は弦の張り替えが難しくて、ちょっと泣きました(笑)。それでもこの重機感に惚れていたし、ロマンが詰まっていたので頑張りましたね。
― 今回試奏したG5420T Electromaticのインプレッションは?
宮崎 今まで触ってきたギターとはまるで違います。鳴らしてみたときに一番ビビッときたんですよね。キャラクターがダントツで違っていたし、あまり持ってないタイプなので、Jetとも仲良くやっていけそうだなって。何よりボディが大きい。大きいものはカッコいいです(笑)。これは僕の信条というか、とにかくデカくありたくて。
― 音のキャラクターはどんな印象でしょうか?
宮崎 優しいですね。それに、他のギターもいい音をしていたけど、G5420T Electromaticは性格がわかりやすかったです。ギターに自我があるとしたら、“自分はこういう音です”って自己紹介が上手いというか、用途がハッキリしているなと思って。自分もゼロか100かみたいな人生を生きているので、いい意味での極端さに惹かれました。
あと、弾く位置で音が変わるのもいいなって。手元で音のキャラクターが変えられるギターやアンプが好きで、できるだけ足元ではなくてフィンガリングで音の変化をつけたいので、その点も自分にピッタリだなって。しかも、ホロウボディって歪ませると音が潰れがちだけど、これは歪ませたときの音がキレイで、そこもメロメロになりました。ファズとかで鳴らしてみたいですね。
― どんなシーンでG5420T Electromaticを使ってみたいですか?
宮崎 ビジュアルがいいのでMVで使いたいと思いました。鏡の前に立ったときの見た目も決め手になりましたから。ライヴでは奥の手みたいな使い方もいいかな。生音もかわいいし、レコーディングでも活躍しそう。レコーディングで生音を録ることも多いんです。手元にマイクを立てて、フィンガリングするときのエアーの音とエレキギターの音をダブルで出すと、アコギをあとからダビングするよりも密着度があるし面白い効果を得られるというか、キラキラ成分が増すんです。そういうときにも使いたいですね。G5420T Electromaticは箱鳴りがあるので、きっと面白くなると思います。使うの楽しみだな~。
左:G5420T Electromatic® Classic Hollow Body Single-Cut with Bigsby®
右:Jet(本人私物)
宮崎一晴(クジラ夜の街)
2017年6月21日、東京にて高校の同期生4人で結成。メンバーは、宮崎一晴(Vo,Gt)、山本薫(Gt)、佐伯隼也(Ba)、秦愛翔(Dr)。短期間のうちに多数の楽曲を制作し、都内ライヴハウスで活動開始。音楽コンテスト〈Tokyo Music Rise 2019 Spring〉や高校軽音楽部の全国大会で優勝したあと、ロッキング・オン主催〈RO JACK〉オーディションで優勝し〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019〉に出演。直後に〈出れんの!?サマソニ!? 2019〉オーディションから〈SUMMER SONIC 2019〉にも出演。2020年から全国各地のイベントへ出演を開始。2022年〈夜景大捜査”夢を叶えるワンマンツアー” 9〉を開催し、12月19日に渋谷WWW Xでのツアーファイナルでメジャーデビュー決定を発表。2023年5月10日リリースのEP『春めく私小説』でメジャーデビューを果たす。2024年11月6日にメジャー2ndフルアルバムをリリース。