CHIE HORIGUCHI SPECIAL INTERVIEW -後編-
5月 12, 2023
グレッチ本来の音を出せるようなギタリストになりたい
ギャロッピングを駆使したプレイをトレードマークに、LEARNERSのギタリストとして、そしてドレスコーズや家入レオのサポートギタリストとして活躍中のCHIE HORIGUCHI。インタビュー後編では、グレッチJetのエッセンスを継承しつつ、チェンバードマホガニーボディやBlack Top Broad'Tronを採用したまったく新しいG5222 Electromatic® Double Jet™ BT V-Stoptailについてインプレッションを聞いた。
自分だけの一本を見つけてほしいですね
― 今日は現行のG5222 Electromatic Double Jet BT V-Stoptailを弾いていただきました。そのインプレッションを伺いたいです。
CHIE HORIGUCHI(以下:CHIE) 見た目の印象としてフィルタートロンのような音かなと思って弾いたら、全然そんなことはなかったんです。どちらかと言うとハイロートロンのようなクリアさと反応の速さがあってびっくりしました。でも、ハイロートロンよりもパワーがある。つまり、グレッチのピックアップのいいとこ取りをしたものという印象で、すごくいいピックアップ(Black Top Broad'Tron)ですね。ただのブロードトロンとは違って、オンリーワンだなと思いました。あとはチェンバードボディも相まって、Jetのダイナソニックにも近いエア感があります。
― どんなシチュエーションで使ってみたいですか?
CHIE 乾いた音がするので、私がオリジナルでやっているジャンル“アメリカーナ”のサウンドを作りたいです。あとは、リアピックアップでマスタートーンをこもらせてチキンピッキングをすると、Telecasterのカントリーっぽさも出せると思ったり、いろいろなアイディアが浮かびます。
― しかも、このモデルは価格が税抜きだと10万円を切っているんです。
CHIE お買い得だと思います。私は自分が本当にいいと思わないとそういうことを言えないので。
― どんな人にオススメですか?
CHIE 私は基本的に歪ませないのですが、歪ませたい人にも合うと思います。普段使っているオーバードライブを踏んだらよく歪んだので、ディストーションサウンドを作る方にも向いている。クリーンでもすごく乾いた音が出るので、それもいいですね。何より、この価格帯のグレッチを持ってもらって“ヴィンテージのグレッチってどんな音だろう?”とさらに深く興味を持ってもらえるきっかけになったらいいなと思います。と言いつつ、G5222 Electromatic Double Jet BT V-Stoptailはデザインも他のブランドにはないオリジナリティが残されているじゃないですか。ノブのアロー(G-Arrow)やテイルピース(Vストップテイルピース)の形状もそうですし。このテイルピースはGキャデラックテイルピースから来ていると思うんです。そういう風に、この元ネタは何だろう?と考察してもらえたら嬉しいですね。
― グレッチをまだ弾いたことがない新世代のアーティストに、どんな言葉でオススメしますか?
CHIE グレッチは扱いづらい、ハウりやすい、オクターブチューニングがシビアとかそういうイメージがあると思うのですが、その要素はないとお伝えしたいですね。弾いてみたら、本当にイメージが変わると思います。でも、弾いてもらうまでが大事ですもんね(笑)。
― 言葉で語るよりも、一度弾いたらイメージが払拭されるかもしれないですね。
CHIE はい。グレッチって扱いづらいイメージがあると思うのですが、このG5222 Electromatic Double Jet BT V-Stoptailはそんなことないです。具体的に言うと、センターポジションはどのジャンルでもどの現場でも使えると思います。フロントピックアップのボリュームを絞ると使いやすい上に、グレッチの個性が出て、抜ける音になると思います。
― 今後の活動について教えてください。
CHIE LEARNERSではギタリストとしてやっていますが、ソロアルバムの2枚目を出すのが今の目標です。時期はまだ決まっていませんが、今年中には出したいなって。ギタリストとしては、スラップバック(エフェクター)を抜いたのもありまして、グレッチ本来の音をもっと出せるようなギタリストになりたいと思っています。
― グレッチらしい音って、みんながスマホで聴いている耳馴染みの良い音とは違うと思います。そのあたりをどう感じていますか?
CHIE そうですね。結局は精神性につながるのですが、やっぱり綺麗に整った音ではないと思うんです。利便性ではなく独自の世界観を貫いているのがグレッチなので。このヴィンテージフィルタートロンもそうだけど、音がとにかく特徴的なんですよ(笑)。だけど、それを貫く精神性、心意気がロックだと思います。デザインでは全力で遊んでいるし、とにかくポリシーを貫く音だと思っていて、そういう部分を伝えたいですよね。
― 自分たちが信じる美学を主張している。
CHIE “これしかできませんけど何か?”みたいな(笑)。他のブランドに負けず、頑張ってきた!貫いてきた!っていう。そこが輝いていますよね。若い世代にもそういう世界観に触れてほしいです。きっと新しい発見がたくさんあると思うので。
― 最後に、これからギターを始めようとしている人たちにメッセージを。
CHIE 私が高校生だった時、自分にとっての相棒を探したかったんです。田渕ひさ子さんも好きだったのでJazzmasterも試奏したけれど、何か自分には似合わないなと思って。で、グレッチを持ったら“自分はこれかもしれない!”と。そう思い込んで信じ続けることで、本当の相棒になったしキャラクターにもなった。だから、自分だけの一本を見つけてほしいですね。結局、ギタリストってそれを求めているじゃないですか。この6120で一人だけで弾き語りライヴをする時って、本当に心細い瞬間があるんです。でも、“このギターがあるから絶対に大丈夫”と思えるメンタルは、相棒にしか出せないものだと思います。ギターから与えてもらっている感じというか。そういう一本を見つけてほしいですね。
CHIE HORIGUCHI
13歳でギターを始め、ロカビリーに影響を受けグレッチを弾き始める。ギャロッピングを織り交ぜたギタースタイルと、アメリカンルーツミュージックを愛するソングライティングで独自の世界観を確立している。2015年にソロ活動を開始。LEARNERSにギタリストとして加入。2017年、CHIE & THE WOLF BAITSの1stアルバム『CHIE & THE WOLF BAITS』をリリース。2021年、ソロデビューアルバム『OUTSIDER』をリリース。2022年、家入レオのツアーにギター&コーラスで参加。