CHIE HORIGUCHI SPECIAL INTERVIEW -前編-
4月 28, 2023
グレッチのギターにはそれぞれに世界観がある
ギャロッピングを駆使したプレイをトレードマークに、LEARNERSのギタリストとして、そしてドレスコーズや家入レオのサポートギタリストとして活躍中のCHIE HORIGUCHI。インタビュー前編では、音楽や長年の相棒であるグレッチとの出会いについて聞いた。
グレッチは自分だけの世界観を想像させるギター
― 13歳でギターを始めてロカビリーと出会ったそうですね。
CHIE HORIGUCHI(以下:CHIE) 中学生の時、友達の家に遊びに行ったらアコースティックギターが置いてあって、それを触ったら衝撃で。絶対にギターをやる!と、アコースティックギターを買ってもらいました。
― 最初はどんな音楽を弾いていましたか?
CHIE 小学校の時はGLAYが大好きで、GLAYを見てミュージシャンになるぞ!と思っていたんです。ギターを買ってもらってからは、ゆずなどを弾いていました。ちょうど世代なので。
― アコギを買ってもらったあとは?
CHIE 実は最初からエレキギターを弾きたかったのですが、買ってもらえなかったんです。不良のイメージがあったり、音がうるさいからって。結果、アコギのほうがうるさかったんですけど(笑)。高校で軽音楽部に入って、それからエレキを弾くようになりました。高校2年生の時、BLANKEY JET CITYとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを好きになったんですよ。で、雑誌の浅井健一さんのインタビューでブライアン・セッツァーに影響を受けたと書いてあって、それからロカビリーにハマりました。まずはブライアンのソロ作品をジャケ買いして、浅井さんのようなCDジャケットのアルバムを買って。
― となれば、必然的にグレッチに辿り着きますね。
CHIE そうですね。19歳の時に、浅井さんやチバ(ユウスケ)さんと同じギターが欲しくて、楽器屋さんで初めてグレッチのTennessee Roseを買いました。初めてのグレッチは“よくわからないなぁ”という感じで、10年くらいグレッチのフィルタートロン(ピックアップ)についてはそう思っていましたね(笑)。
― 10年を経てわかったきっかけが何かあったんですか?
CHIE Tennessee Roseのあとに今日持ってきたTennesseanを買ったのですが、Tennesseanもバンドで鳴らしてみたけどちょっとわからなくて。Tennesseanはヴィンテージでも手が届きやすかったので買ったのですが、買ってみたものの上手く使いこなせず“何でだろう?”とずっと思っていたんです。その時はブライアン信者だったので、ブライアン・セッツァーと同じものを買えばいいんだ!と思って(笑)、覚悟を決めて同じ6120を買って。それでやっとグレッチの音がわかりました。
― わかったというのは具体的に言うと?
CHIE 現行のピックアップよりもレンジが狭くて、余分な音がない感じですかね。あと、どのメーカーのアンプでも絶対にいい音がするんです。それは弾き手の技量にもよると思うのですが、今は他のグレッチでもどのアンプでも同じ音を出せます。とは言え、そうなったのもわりと最近なんですよ。6120を買った直後は、固定概念でロカビリー=スラップバックという感じで、ショートディレイをかけっぱなしにしていたんです。でも、最近はそれも辞めて本来のグレッチの音を研究しようと思っています。完全にドライでやってみると、グレッチの本当の良さがわかった感じです。
― 6120にブライアン・セッツァーのサインが入っていますね!
CHIE 5年前にブライアン・セッツァー・オーケストラのライヴを見に行った時、偶然にも最前列のチケットが当たったんです。一番前だから、ギターを持って行ってサインをもらおうと思って(笑)。で、ステージ上でもらいました。
― この6120がメインギターなんですよね?
CHIE はい。一回ネックが折れたのですが、直してからは鳴りが逆に良くなって、困った点はまったくないですね。ブリッジも留めない派なんですけど、オクターブチューニングも狂わないですし(笑)。
― グレッチはチューニングがシビアと言われがちですが…。
CHIE でも私、チューニングの問題が何なのか全然わからなくて、そんなことないけどなってずっと思っています。右手(ピッキング)の強さにもよるのでしょうけど。
― 個体差と弾き方も関係しているのかもしれません。
CHIE 19歳からグレッチしか持っていないので、慣れているのもあるかもしれない。グレッチは弾きにくいと言われるけれど、私は…乗り越えたって感じですかね。弾きにくいのはわかりますけど、オクターブチューニングとかハウリング問題は感じたことがないので、そういう意味での弾きにくさや扱いにくさはないです。
― 見た目の話が出ましたが、グレッチは見た目に惹かれる人も多いと思うんです。
CHIE 私も最初は見た目から入ったので、すごくわかります。例えば55年製の6120だと、ウエスタンインレイとかGのマークがあったり。White FalconもそうですしPenguinもRoundupも、グレッチのギターにはそれぞれに世界観があるんですよね。まずはその魅力にハマりました。あとはソリッドギターが主流だった時、ホロウボディを貫いたのも独自の世界観を貫いていると思います。そこに共感して、このギターを持つならこういう世界観でいきたいとか、自分だけの世界観を想像させてくれるギターだと思いますね。
― 音だけではなく弾き手の世界観も作る、不思議な魅力があるギターだと思うんです。
CHIE 利便性は良くないかも知れないけど(笑)、そこが良くて。それよりも美を追求している矜持を感じます。誰が見ても美しいものって昔からあると思うんですけど、それを守り抜いている感じ。そこがすごくカッコいいし、だから車好きの人やバイカーの人、ヴィンテージが好きな人からも好かれるんだろうなって思います。
CHIE HORIGUCHI
13歳でギターを始め、ロカビリーに影響を受けグレッチを弾き始める。ギャロッピングを織り交ぜたギタースタイルと、アメリカンルーツミュージックを愛するソングライティングで独自の世界観を確立している。2015年にソロ活動を開始。LEARNERSにギタリストとして加入。2017年、CHIE & THE WOLF BAITSの1stアルバム『CHIE & THE WOLF BAITS』をリリース。2021年、ソロデビューアルバム『OUTSIDER』をリリース。2022年、家入レオのツアーにギター&コーラスで参加。