畑山悠月(KALMA) SPECIAL INTERVIEW -後編-

10月 31, 2023


 

ギターに求めるものは僕の歌を乗せてくれるかどうか。

僕がグレッチを使い続ける理由はそれです

 

メンバー全員が2000年生まれという札幌出身の3ピースロックバンド、KALMA。2016年の結成以降、彼らはノスタルジックなメロディを持つ曲とエネルギッシュなライヴが歓迎され、ライヴハウスシーンでめきめきと頭角を現してきたが、中でもグレッチのフルアコを腰高に抱え、かき鳴らすヴォーカル&ギターの畑山悠月の存在は一際目立つものだった。その畑山がインタビューに登場。インタビュー後編では、畑山が考えるグレッチというブランドの魅力や、最新の4thミニアルバム『ムソウ』を含め直近のKALMAの活動について聞いた。

 

音楽に生かされているからこそ、“あの時の俺はだからグレッチを選んだんだな”って

 

― 畑山さんがギターに求めるものは、サウンドとルックスそれぞれにどんなことでしょうか?

畑山悠月(以下:畑山) 音から入る人ももちろんいるとは思うんですけど、ほとんどの人が楽器屋さんで、まずは見た目から入るじゃないですか。僕も楽器屋さんでグレッチの大きなボディを見て、“カッコいい。弾いてみたい”と思いました。だから、見た目で即決だったんです。音は正直、慣れていくもので、歌声もそれに合っていくものだと思っていました。最近、ライヴの規模が大きくなったり、出させてもらうフェスも増えてきた中で、求める音も増えてきたので新たにG5420Tを買いましたけど、それもまずは見た目ありきで、音からは選んでいないんです。僕がギターに求めるサウンドがあるとしたら、僕の歌を乗せてくれるかどうか。僕がグレッチを使い続ける理由は、サウンド面で言ったらそれです。今後もグレッチが増えていくんだろうなって思います。

 

― 他にグレッチを使っている人って気になりますか?

畑山 でも、まだそんなに出会っていないんですよね。去年、ツアーのファイナルで地元のZepp Sapporoにサンボマスターを呼んだんです。サンボマスターは僕らの超ヒーローで、何度も一人の夜を救ってもらったというか、背中を押してもらったんですけど、サンボマスターとやった時に僕がリハでオレンジ君を弾いているのを見て、サンボマスターの山口(隆)さんが“めっちゃカッコいいね。俺も同じの持ってるわ”って。本当に見た目がほぼ一緒のグレッチを持っていて、“一緒じゃないですか”って盛り上がったんですけど、その日のライヴは山口さんもそのギターを使って、僕もオレンジ君を使ったから、中には僕が山口さんのギターを借りていると思ったお客さんもいたんじゃないかな(笑)。これまで対バンしてきたバンドの中にもグレッチを使っている人はいたと思うんですけど、ちゃんとグレッチの話をしたのは山口さんだけですね。

 

― どんな人にグレッチのギターを使ってほしいですか?

畑山 本当に音楽が好きな人に持ってほしいっていうのはあります。昔に比べてギターって手に取りやすくなっているから、以前にも増して、音楽の戦国時代になってきていると思うんですよ。特にSNSが増えて、何がバズるか、ハネるかわからない中で、僕はやっぱり音楽が本当に好きでやっているって思える人の音楽が好きで、そういう人たちがグレッチを使っているイメージでした。今までこのグレッチの取材を受けていた人たちの顔ぶれを見て、音楽に生かされている人たちだと思ったし、僕自身、本当に音楽に生かされているからこそ、“あぁ、あの時の僕はだからグレッチを選んだんだな”って思いました。

 

Kalma Sub 2

 

“こんな音楽をやっているのは俺らくらいでしょ”って思える自信作ができました

 

― 現在、そして今後の音楽活動についても聞かせてほしいのですが、10月18日にリリースした4thミニアルバム『ムソウ』はKALMAにとってどんな作品になりましたか?

畑山 ライヴでは僕らいつも毎回ケガするぐらい激しく、衝動的にやっているんです。それがめっちゃロックだと思うし、見ている人がドキドキするようなライヴが好きだからやっているんですけど、KALMAって若くて、ふわふわな感じで、かわいいんでしょって見ている方もいると思うんです。実際そんなふうに言われることもありますしね。でも、今回の『ムソウ』ってアルバムを“KALMAです。初めまして”とポンと出していたら、バンドのイメージって全然違っただろうなって。そんな作品になったと思います。

 

― そういうテーマのもと作り始めたんですか?

畑山 テーマとしてあったわけではないです。今まではアルバムを作っていく中で、“バラードが増えちゃったから速い曲を書こう”とか、逆に“速めの曲が多いからバラードを書こう”とかってことが多かったんですけど、今回は何も考えずに、今、自分が書きたいテンポ、書きたい歌詞、鳴らしたいコードで、バーっていっぱい曲を作っていったら、ほとんどがアップテンポの曲になっちゃって。でも、それが正解だと思ったんです。そしたら全曲めちゃ良くなりました(笑)。同世代のバンドがいっぱいいるけど、“その中でこんな音楽をやっているのは俺らくらいでしょ。埋もれてないでしょ”って思える自信作ができました。誰にも真似できないんじゃないかなって。

 

― それでタイトルが無双を連想させる『ムソウ』なんですね?

畑山 いろいろな意味を込めているんです。大体の人が“無双”を思い浮かべると思うんですけど、僕はけっこう夢を想う“夢想”をイメージしていて。何もわからずに、ただただ毎日札幌のライヴハウスでライヴしていた18〜19歳の頃は、ただ夢を追うだけの夢想家だったんですけど、最近は夢も追いながら、“今のKALMAめっちゃいい。俺ら最強じゃん”って思うんですよ。そんな時は無双していて、めちゃくちゃいいライヴしたあと、家に帰ってから風呂上りに髪を乾かしながら、“さっきまであんなに楽しかったのに”って無の境地になることもあるんです。そういう無を想う“無想”もあるなって。

 

― その『ムソウ』では、けっこうギターの音色が変わってきたと感じましたが。

畑山 今回のレコーディングは、ほぼグレッチだけなんですよ。今まではエンジニアさんやローディさんに持ってきてもらったギターを使うこともあったんですけど。ダビングする時にちょっとだけソリッドギターの音を入れることもありましたけど、最後に「意味のないラブソング」と「ムソウ」を録った時は、新しいグレッチもあったので、その2曲のメインはそれですね。音色は確かにメインをグレッチにしたこともあって、めちゃめちゃ変わりましたね。

 

― どんなふうに変えたんですか?

畑山 今回、曲によってはギターが1本しか鳴っていないパートが多いし、中には曲を通して1本しか入れていない曲もあるし、メインで1本だけ弾いて、それで成り立つ音色にしたかったんです。音源ってけっこうダビングするものですけど、3ピースバンドなんだから、華やかにせずに3人の音だけでいいと思ったんですよ。レコーディングは3人で同じ部屋に集まって、一発録りするんですけど、3人で“せーの”で録った音をそのままOKテイクにできるような音色にしたかったんです。その結果、めっちゃ音色が変わったし、自分の声に合う音にできたと思います。

 

― 今のお話からもかなりグレッチを使いこなしていることが窺えます。

畑山 以前はグレッチに踊らされていましたけど、最近はちゃんと理解できている気がします。ハウる瞬間もわかるんですよ。買った当時は、全然わからなかったんですけど、フレットのどこを押さえたらハウるって、箱モノのギターならあるじゃないですか。それがわかってきた。だから弾いていても楽しいですね。

 

― 11月から〈KALMA one man tour 2023~2024『ムソウニナラス』〉も始まります。

畑山 はい。来年1月まで全国を周ります。10本という本数も、会場の規模も僕らにとって最大規模なんですよ。コロナ禍の規制も緩和されて、前のライヴハウスが戻ってきているから、わちゃわちゃのがやっぱり楽しいんですけど、KALMAはやっぱり曲が良いバンドだと自負しているから、そこはしっかりとお客さんの熱量に飲み込まれずに良い音楽をやるという意思を持って、いいライヴをしたいと思います。

 

― 今度のツアーでG5210T-P90 Electromatic Jetは使いますか?

畑山 使います。でも、生意気かな。グレッチを3本も持ち替えたら(笑)。そんなことはないですよね? 

 

― ないと思います。ぜひ使ってください。それでは最後に、これからギターを始めようと思っている人にアドバイスをお願いします。

畑山 これからギターを始めるなら、グレッチはめっちゃいいと思います。やっぱり家で弾きたいじゃないですか。でも、アコギだと音が大きすぎるし、エレキだと生音は小さすぎるし、アンプにつないだらうるさいし。でも、グレッチは生音がちょうどいい。フェスとかサーキットの楽屋で、いろいろな演者さんがギターを弾いている中で、僕のグレッチの生音が一番でかい(笑)。アコギとエレキの良さを兼ね備えているという意味で、めっちゃオススメです。始めたら、難しくてもやめないでほしいです。音楽が本当に好きなら、難しくても、指が痛くても続けられると思います。あきらめずに弾き続ければ、ギターもこっちを向いてくれるはずです。だから、嫌いになるまで弾き続けてほしい。でも、音楽が本当に好きなら嫌いになることはないと思います。実際、僕がそうだったから…ってことくらいしか言えないですね(笑)。

 


 

KALMA

畑山悠月(Vo,Gt)、斉藤陸斗(Ba,Cho)、金田竜也(Dr,Cho)による3ピースバンド。2016年4月に札幌で結成。メンバー全員が2000年生まれ、北海道出身の3ピースロックバンド。どこか懐かしさを感じさせる印象的なメロディと、エネルギッシュで躍動感のあるライブが持ち味。2018年5月よりタワーレコード札幌ピヴォ店のみで販売を始めた自主制作CD『少年から』が、同店の週間インディーズチャートで1位を獲得。7月には北海道の大型音楽フェス〈JOIN ALIVE〉への史上初の高校生での出演。2020年3月4日に、ミニアルバム『TEEN TEEN TEEN』でメジャーデビュー。2023年は10月に4th Mini Album『ムソウ』のリリースと、11月からは年をまたいで開催されるワンマンツアー〈ムソウニナラス〉を控えている。

https://www.kalma-official.com/