畑山悠月(KALMA) SPECIAL INTERVIEW -前編-

10月 24, 2023


 

僕の中でグレッチは“貴族”

 

メンバー全員が2000年生まれという札幌出身の3ピースロックバンド、KALMA。2016年の結成以降、彼らはノスタルジックなメロディを持つ曲とエネルギッシュなライヴが歓迎され、ライヴハウスシーンでめきめきと頭角を現してきたが、中でもグレッチのフルアコを腰高に抱え、かき鳴らすヴォーカル&ギターの畑山悠月の存在は一際目立つものだった。その畑山がインタビューに登場。インタビュー前編ではグレッチを手にしたきっかけや、今回試奏したG5210T-P90 Electromatic Jet Two 90 Single-Cut With Bigsby(以下:G5210T-P90 Electromatic Jet)のインプレッションを語ってもらった。

 

歌の乗り方が違う。やっぱりこいつなんだなって思います

 

― ギターを始めたきっかけから教えていただけますか?

畑山悠月(以下:畑山) 音楽は昔から好きだったらしいです。僕自身は自覚がなかったんですけど、おじいちゃんおばあちゃん含め家族はそう思っていたようで。6歳の頃には、おじいちゃんとおばあちゃんに薦められてバイオリンを小6まで習わせてもらったんです。それが初めての楽器でした。でも、同時に小中学校とずっと野球もやっていたので、中学校に入ったタイミングでバイオリンはやめたんですけど、その後、中2になった時、たまたま親の車でMr.Childrenが流れているのを聴いて、“ミスチルってこんなにカッコいいんだ”って。小学生の頃は自覚がなかったですけど、中学生になってから、音楽めっちゃ好きだなって思った時に唯一ドキドキしたというか、こんなふうになりたいと思ったのがミスチルで、いとこのお父さんからアコースティックギターを借してもらって練習を始めたんです。

 

― 最初はどんな練習をしていましたか?

畑山 ヒットソングのコードブックを買ってきて、弾き語りばかりやっていました。同じようにギターを始めた周りの子たちの話を聞いていると、僕は割とさらっとできたほうだと思います。たぶんバイオリンをやっていたから指が慣れていたんでしょうね。指が痛くてやめた人は多いと思うんですけど、僕は全然痛くなかったし、コードチェンジもすぐにできたし、相性がいいと思いました。

 

― どんな曲を弾き語りしていたんですか?

畑山 もちろんミスチルです。その後、中3の時にエレキギターを、アンプもセットになっている初心者セットで買ってONE OK ROCKとかASIAN KUNG-FU GENERATIONとかKANA-BOONとかを弾いてました。でも、歌うのがそもそも好きだったので、エレキを買ってからもリードギターじゃなくて歌いながらバッキングばかり練習していたんです。あの時、ちゃんとリードギターも練習しておけば、今頃はもっと上手くなってたのかなって思います(笑)。 

 

― そんな畑山さんがグレッチギターを初めて手にしたのが、KALMAが2020年にメジャーデビューするタイミングだったそうですね?

畑山 はい、高校を卒業してメジャーデビューが決まった時に自分へのお祝いとして買いました。

 

― なぜグレッチだったんですか?

畑山 椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」の歌詞にも出てくるし、グレッチという名前は知っていたんですけど、札幌のライヴハウスでグレッチを弾いている先輩っていなかったし、僕自身、グレッチ使いのギタリストの方々を通っていたわけではなかったんです。だから、普通にもっとポピュラーなギターを買おうと思っていたんですけど、札幌の狸小路って商店街にあるBIG BOSSという楽器屋さんで、こいつ(メインのG6120T-55VS)に一目惚れしちゃって。

 

― それは形に?

畑山 はい、形と色に。こんなギターを持っている人、札幌のバンドマン界隈でいないぞと思いました。これを持ったら、俺、頭ひとつ抜けれられるんじゃねって(笑)。でも値段を見たら、18〜19歳の子供には買えなくて。クレジットカードも持っていなかったから、お母さんを連れてきて、お母さんの名義でローンを組んでもらって買いました。

 

― 実際に使ってみていかがでしたか?

畑山 まず周りのバンドマンから“音も見た目もめっちゃいいね”って褒められました(笑)。でも、その時はまだ僕がグレッチに踊らされているというか、ステージに立っているのが僕じゃなくて、グレッチみたいな感じだったんですよ。それくらい、こいつの存在感が強すぎたんです。でも、ローンを組んだからにはずっと大事に使おうって思いました(笑)。 

 

― 今現在はいかがですか? グレッチに踊らされているという感覚は、さすがにもうないのでは?

畑山 今は“共に”って感じです。こいつと僕の2人でステージに立っています。対バンライヴの時、アンコールで対バンのバンドのギターを弾きながら歌うってことがよくあって。そういう時ってやっぱりいつもと全然感覚が違うんですよ。歌の乗り方が違うというか、やっぱりグレッチなんだなって思います。

 

― 新たにG5420Tを買ったのは、新しいギターが必要になったからなんですか?

畑山 違う音色が欲しいと思って、去年、別メーカーのソリッドギターを買ったんですよ。すごく音が良かったので1年ぐらい使っていたんですけど、当然グレッチとは違う。やっぱり僕にはグレッチの方が合うと思うこともあって、これはもう1本グレッチを買うしかないと2本目を買いました。それ以降は、グレッチ2本をメインとしてライヴでは使ってます。

 

― 2本の使い分けはどんなふうに?

畑山 最初に買ったG6120T-55VSのことを、僕は“オレンジ君”って呼んでいるんですけど(笑)、いい意味で音がそこまで抜けないんです。それは僕の音作りもあるんですけど、そのぶん3ピースバンドの迫力がめっちゃ出て、“3ピースの音圧じゃない”ってよく言われるのは、(斉藤)陸斗(Ba,Cho)と(金田)竜也(Dr,Cho)が上手ってことに加えて、オレンジ君の音の出方がミドルを中心に高音から低音まで本当に良くて、真っ直ぐにゴーンといくんですよ。だからめっちゃ好きなんですけど、そう思いつつ、バラードのような曲の時はもうちょっと1〜2弦の高音が聴こえてきたらいいなと思ってたんです。それで、楽器屋さんでG5420Tを買って、リアピックアップで音も作って、今はオレンジ君と使い分けています。オレンジ君のピックアップはセンターを使っているんです。だから、音はだいぶ違うと思います。

 

― 2本目は呼び名があるんですか?

畑山 いや、まだ特には。今のところ“あいつ”ですね(笑)。

 

― グレッチを使い始めて4年経ちました。グレッチというブランドの魅力についてもわかってきたんじゃないかと思うのですが。

畑山 僕の中では“貴族”ですね(笑)。10万円ちょっとで新品が買えるとなっても、やっぱり高級なイメージがあるんですよ。見た目も大きいですしね。最近買った“あいつ”だって、みんなに見せた時に“いくら!? ”って聞かれて、“いくらに見える?”って聞いたら“めっちゃ高そう”って。“15万ちょっとだよ”って言ったらびっくりされました。

 

Kalma Sub 1

 

歌よりも音が先に出るイメージがあって、それがすごく新鮮だった

 

― さて、ここからは今日試奏していただいたG5210T-P90 Electromatic Jetのインプレッションを聞かせてほしいのですが、なぜこちらを選んだのでしょうか?

畑山 今使っている2本は、アンプから出てくる音が弾いてからちょっと、本当に0.00数秒なんですけど、ちょっとあとに乗ってくるイメージなんですよ。だから歌いやすいんだと思います。要は歌が先に出せるから。絶対、同時に音は出ていると思うんですけど、“せーの”で声とギターの音を出した時に、ちゃんと僕の“あー”のちょっと後ろをズンッて突いてくれる。歌を乗っけてくれるというイメージがあるんですよね。ライヴで最初、ステージに出ていってジャカジャーン、“イエーイ!”ってやった時も僕の“イエーイ!”が先で、その後にギターが鳴って、観客のボルテージを上げてくれるイメージがあるんです。だから、歌いやすかったのかなと思っていたんですけど、さっきG5210T-P90 Electromatic Jetを弾いたら、逆に音のほうが先に出るイメージがあって、それがすごく新鮮だったんです。2ビートを使った、めちゃめちゃテンポが速い曲に合うんじゃないかって思いました。それと、音が硬いのかなと思ったら、全然硬すぎなくて良かったです。今まで欲していた1〜2弦の高音もはっきりと聴こえるし、リアで高音を出している時も6弦をブーンと鳴らしたら、6弦の低音がめっちゃ聴こえたのでいいなと思いました。

 

― ルックスはいかがですか? 

畑山 カッコいいと思いますよ。パーツの一つひとつ含め全部がカッコいいです。正直、迷ったんですよ。やっぱり大きなボディにはこだわりがあるというか、見た目の定着という意味で、“畑山悠月と言えばグレッチのでかいギター”みたいなことを考えたほうがいいのかもしれないですけど、すでに2本持っていので。今後、G5210T-P90 Electromatic Jetをどう使っていくか、ストラップの位置も含めまだわからないですけど楽しみです。

 

― とりあえずはさっきおっしゃっていたように速い曲で使う、と。

畑山 そうですね。でも、僕ら、ロックバラードみたいな曲もけっこうあるから、そういう曲にも合うと思います。

 

― 陸斗さんと竜也さんは何て言うと思いますか?

畑山 “カッコいい”と言うと思いますよ(笑)。オレンジ君しかなかった時、2人は“ギターの音をもっと上げてください”ってモニターさんによく言ってたんですよ。“聴こえない?”って聞いたら、“いや、ギターの音は聴こえるんだけど、欲しいギターの音が聴こえない”って言われて、なるほどねって。“だから、リズムが取りにくいんだよね”って言われていた中で、2本目を買って、リアのピックアップも替えたら“聴こえてなかったところが聴こえるようになってめっちゃ嬉しい”と言われたんです。2人はけっこう高音のギラッとしたところが聴こえたほうがいいんだなという意味で、僕がG5210T-P90 Electromatic Jetを持ったらめっちゃ喜ぶと思います。

 


 

KALMA

畑山悠月(Vo,Gt)、斉藤陸斗(Ba,Cho)、金田竜也(Dr,Cho)による3ピースバンド。2016年4月に札幌で結成。メンバー全員が2000年生まれ、北海道出身の3ピースロックバンド。どこか懐かしさを感じさせる印象的なメロディと、エネルギッシュで躍動感のあるライブが持ち味。2018年5月よりタワーレコード札幌ピヴォ店のみで販売を始めた自主制作CD『少年から』が、同店の週間インディーズチャートで1位を獲得。7月には北海道の大型音楽フェス〈JOIN ALIVE〉への史上初の高校生での出演。2020年3月4日に、ミニアルバム『TEEN TEEN TEEN』でメジャーデビュー。2023年は10月に4th Mini Album『ムソウ』のリリースと、11月からは年をまたいで開催されるワンマンツアー〈ムソウニナラス〉を控えている。

https://www.kalma-official.com/