佐々木亮介(a flood of circle)SPECIAL INTERVIEW -後編-
8月 5, 2025
本当に面白いと思うことをやるっていうポジティブな気持ちがやっと芽生えてきた
ファルコンと革ジャンをこよなく愛する佐々木亮介が4年ぶりに再登場。彼が率いるa flood of circleは1年後に迎える結成20周年に向け、精力的に活動を続けている真っ最中だ。インタビューの後編では、6月14日に配信した2025年リリース第1弾シングル「KILLER KILLER」で打ち出したバンドの新境地に加え、現在目指しているという日本武道館公演も含め、今後の活動について語ってもらった。
― 佐々木さんの中でバンドとソロにおけるギターのポジションの違いってあるんでしょうか?
佐々木亮介(以下:佐々木) ソロもいくつかグラデーションが自分の中にあるんですよね。つまり弾き語りしている時と、トラックメイキングみたいにパソコンの中で完結する曲の作り方をしている時と、もう一つセッションしている時があるんですけど、弾き語りはアコギでやっているから歌のおまけって感じです。エレキギターを使っている時はバンドもソロも一緒かもしれない。絶対に欲しいものというか、自分の音楽からエレキギターの音を抜いたら意味がないっていうか、俺がやる必要があんまりなくなる感じがするんで、どれだけトラックメイキングっぽくても、歌がメインでも、肝心な時はエレキギターの音って考えてますね。
― なるほど。6月14日に配信リリースした「KILLER KILLER」でも胸を焦がすような曲の中でエレキギターのリフが際立っていましたが、これまでリリースしてきた曲の中で一番好きだとおっしゃっていましたね。どんなところでそうに思ったんですか?
佐々木 さっきのソロの話ともつながるんですけど、トラックメイキングでやってきたこととバンドでやってきたことが自分の中で初めて合流したというか、バンドで録った音を家に持ち帰って作り込んだんですよね。一つ前の『WILD BUNNY BLUES / 野うさぎのブルース』ってアルバムは、さっき(前編)のロック問題じゃないですけど、普通にスタジオで録ることに意味があるのかって悩んだ挙句、わざわざ山に行って、機材のないところに機材を持ち込んで録ったんですけど、「KILLER KILLER」を録る時に同じことをやっても意味がないと思って、山で録ることも含め、これまでやってきた録音の仕方をどうやったら破壊できるのかを考えていたら、メンバーがひいちゃって(笑)。“普通にやろう”って言うから“わかった”ってやったんですけど、やっぱり自分が面白いと思ってないままやっちゃったから、最初はあんまり面白くない曲になっちゃったんですよ。しかも2025年のリリース第1弾だったから、ポーズだけじゃなくて、本当にこの曲に賭けたいと思ってやったのに、それがこれかって思って、家に持って帰って、切ったり貼ったりしていろいろ壊してみたんです。そしたら面白くなったという手応えがあって、そういう意味でも、これまで20年ぐらいやってきたことがソロとかバンドとか分けずにできたというか、自分のありったけのことをやったと思えたんです。だから、正直曲がいいっていうより“頑張ったで賞”みたいな話かもしれない。自分に頑張って賞をあげちゃってるってやばいかもしれないですけど、俺は本当にいい曲だと思ってるんですよ。
― ギターリフもさることながら、ドラムの音が印象的ですよね。
佐々木 3分半ぐらいナベちゃん(渡邊一丘)に叩いてもらったドラムの中に、ここがいいっていうドラムパターンがあったんですよ。2小節ぐらい。それを永遠に繰り返してるっていう。だから、ナベちゃんごめん。レコーディング2小節でよかったじゃんみたいな(笑)。いや、サビは叩いてもらったドラムを普通に使ってるから、それはちょっと言い過ぎか。でも、そんなふうに作ったんですよ。
― え、もしかしてギターリフも?
佐々木 家で録りました。スタジオでやったんですけど、それはつまらなかったんで(笑)。もちろん、(アオキ)テツのギターと俺のギターが混ざってますけど。
― そもそも「KILLER KILLER」はどんな感情から作っていったんですか?
佐々木 すごく悩んでいたんですよ。バンドではあるけど、ロックなのかなみたいに思ってたんです。ずっとツアーしながら。で、どんどん抜き身になっていったんですよ。山でレコーディングしたり、照明もつけっぱなしでライヴしたり。SEをかけるのもやめたし、ステージにモニターを置くのもやめたし。本当に4人の演奏だけで勝負して面白くなかったら、もう意味はないだろうくらいに思っていたんです。
じゃあその状態でしっくりくる曲って、山で録るでもなく普通に録るでもなく、何なのかずっと悩んでたんですけど、ツアーの途中で後輩バンドと対バンした時、自分が38歳だったことをふと思い出したんです。すげえ歳を取ったなって。すげえって言うと言い過ぎですけど、年下の子から“コピーしてました”とか言われるとね(笑)。それならまだいいんですけど、“中学生の時、学校に居場所がなくて、便所で一人で聴いてました”っていう子がいて、そうかと思ったんですよ。俺、いまだに中2ぐらいの気持ちでやっちゃってるところがあるんですけど、俺はもう大人で、本当の中2が便所で一人で泣きながら聴いてたんだと思ったら、すごくグッと来ちゃったんですよ。
― なるほど。
佐々木 それでちょっと客観視しちゃったんですよね。今、自分がどこにいるかってことを。そしたらレコーディングしたものを壊しても別にいいと思ったし、本当に面白いと思うことをやるっていうちょっとポジティブな気持ちがやっと芽生えてきたんです。久々にそういうポジティブな気持ちで曲を書けたし、編集作業自体もせっかく録ったのにメンバーは気持ち悪かったかもしれないですけど、正直、俺はすごくポジティブになれたんです。自由になれたっていうか、やっていいじゃんって思えた。今ならメンバーもわかってくれるっていう甘えもあったし、実際に許してくれたんですけど、そういうポジティブさがこの曲には入っていると思います。
― 誰かに歌っているようにも聴こえるし、自分自身に歌っているようにも聴こえるのは、そういうことだったんですね。
佐々木 混ざっちゃってるかもしれないですね。
― 「KILLER KILLER」というタイトルは、“キラキラ”と掛かっているんですよね。
佐々木 ちょっと恥ずかしいですけどね(笑)。最初、恥ずかしすぎて、変えようかと思ったんですけど、サビで《君はKILLER KILLER》と歌ったらすごく気持ち良かったんです。これはもうメロディと言葉が合っているってことだからって諦めて、これにしました。

― 現在、新しいアルバムに向けて曲作りを進めているそうですね?
佐々木 はい。5曲ぐらい一気にできたところです。
― アルバムのリリースは11月ですか?
佐々木 そうです。でも予定って感じで。新宿の歌舞伎町でリリースライヴをやりたいんですよ。無料で。
― そのためのクラウドファンディングもすでに(7月初旬の時点で)290%達成しているという。
佐々木 ヤバいですよね。みんな、マジありがとうって思いました。
― 2023年9月にリリースしたシングル「ゴールド・ディガーズ」でも宣言していましたが、日本武道館ライヴを目指しているんですよね?
佐々木 武道館の抽選が今年の秋らしくて、日にちを押さえられたらフリーライヴで言いたいんですよ。
― その「ゴールド・ディガーズ」のプロデュースをストレイテナーのホリエアツシさんに、そして2024年3月にリリースしたシングル「キャンドルソング」のプロデュースをASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんに頼んだりと、a flood of circleはそのあたりからギアをぐっと上げた印象があるんですけど、そのモチベーションは結成20周年に向けてということだけではないですよね?
佐々木 正直、俺はすごく能天気な人間なんです。だから、とにかくただバンドをやりながら、いい曲を作ってから死にたいとしか思っていなくて、それ以外のことはそんなに考えていないんですけど、それを掘り下げていくと、たぶん働きたくないのが一番でかいんだと思います。絶対に働きたくないんですよ(笑)。で、今のところこれで食えているから、絶対にこのバンドは手放せないんですよね。でも、メンバーはそうでもないらしくて、それこそ「ゴールド・ディガーズ」を作る直前ぐらいにナベちゃんに呼び出されて、ナベちゃんは俺に発破かけるつもりだったと思うんですけど、“40歳までこのまま同じ調子だったら、バンドは続けられない”って言われたんですよ。俺はやりたいと思いましたけど、クサいことを言うと、ナベちゃんじゃなくてもいいわけじゃないんですよね。やっぱり一緒にやりたいから、40歳になった時、もしバンドをやめることになったとしても納得してほしいと思って、だったら武道館かなと思ったんです。わかりやすいから。それで、そこに向けて走っているのに「KILLER KILLER」でドラムを切り貼りしちゃったから、ちょっとヒリついちゃったっていう(笑)。でも、バンドってそれぐらいがいいんじゃないのかな。甘えですけどね。メンバーに甘えてるんですけど、それを許してくれてるからヒリヒリしていられるっていうか、スタジオでヒリついても帰らないだろう、とりあえず現場には来てくれるだろうって俺は思っているんですけどね(笑)。

(左)White Falcon(本人私物)
(右)Black Falcon(本人私物)
佐々木亮介(a flood of circle)
1986年、東京都出身。2006年、a flood of circleを結成。メンバーは、佐々木亮介(Vo, Gt)、渡邊一丘(Dr)、 HISAYO(Ba)、アオキテツ(Gt)。2021年、バンド史上初となるホールワンマンをLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて開催。同年10月に代々木公園野外音楽堂にて入場無料ライヴ〈I'M FREE 2022〉を開催。2023年2月に12枚目のフルアルバム『花降る空に不滅の歌を』をリリース。2023年9月にホリエアツシ(ストレイテナー)プロデュース「ゴールド・ディガーズ」をリリース。2024年3月に後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)プロデュース曲「キャンドルソング」が収録されたEP『CANDLE SONGS』をリリース。全国ツアー〈CANDLE SONGS -日比谷野外大音楽堂への道-〉を4月よりスタートさせ、8月12日に10年ぶりとなる日比谷野外大音楽堂にてワンマン公演を開催。チケットはソールドアウト。2024年11月にフルアルバム『WILD BUNNY BLUES / 野うさぎのブルース』をリリース、全国37公演のツアーを敢行。ツアーセミファイナルのZepp DiverCity公演では、今秋ニューアルバムをリリースすること、そして2025年11月9日(日)新宿歌舞伎町にてリリース記念フリーライヴを開催することを発表。
