宮崎一晴(クジラ夜の街)SPECIAL INTERVIEW -後編-

10月 11, 2024


 

ギターにはずっと強欲で支配力のある楽器であってほしい

 

“ファンタジーを創るバンド”をコンセプトに掲げてリスナーに未知の体験を提供する、クジラ夜の街。その言葉通り、世界観が確立された楽曲やライヴパフォーマンスで魅了し、シーンで頭角を現している。そんな次世代を担うロックバンドから、ヴォーカル&ギターの宮崎一晴が登場。後編では、ギターに求めるものやバンドの今後、ギターを楽しむために大切なことについて伺った。

 

― 宮崎さんがギターに求めるものは?

宮崎一晴(以下:宮崎) やっぱりキャラクターですね。あと、見た目は大事。ルックスのインパクトを求めています。

 

― 確かに、現在愛用しているJetも前編で弾いていただいたG5420T Electromaticも、見た目が決め手になったそうですね。

宮崎 音を細かく聴いている人よりも、見た目のカッコ良さやイメージから入る人のほうが圧倒的に多いと思うんですよね。だから自分が気に入るかどうかは、まずはギターの顔で見ています。

 

― クジラ夜の街は多彩な曲調を表現しつつも、軸にはギターロックがあると思います。ただ昨今はギターソロが長いと聞き飛ばされるという話もありますよね。そういう時代において、ギターの役割はどうなっていくとお考えですか?

宮崎 でも、これからギターソロの時代が来そうじゃないですか? レコードが顕著なように、今は古いものがまたブームになっていますし、次はギターソロがまた時代の先頭に来そうだなと思ってるんですよ。だから、ギターにはそのままどっしりしててもらいたいし、自分たちはギターソロのある曲をそのまま図太くやっていけばいいと思っています。ある種の普遍性がギターのいいところなので、音や見せ方は変わっていくべきだと思いますが、“ギターが楽器の王様なんだぞ”というスピリットは変わらずに持ち続けてほしいなって。それが、僕がギターに求める役割かな。ギターにはずっと強欲で支配力のある楽器であってほしい。そういう意味で言うと、ギターに求めるものは支配力ですね。空間掌握力というか、鳴らしたらその場が一瞬でギターの音に染まるような存在感がこの楽器に求められていることだし、どれだけ後ろに行ってもギターの魅力は前に出てしまう、主役になってしまうんですよ。だから(ギターソロが聴かれないと言われても)焦る必要はない気がしているんですよね。

 

― 最新作である崎山蒼志さんとの共作曲「劇情」でもギターが印象的ですし、宮崎さんと崎山さんの声の融和が心地いいです。

宮崎 声質が意外と似ているんですよね。キャラクターは全然違うのに、どこか共通点があるのは歌ってみて気づいたし、面白い発見だったというか。ハモったときもキレイにハマるなって思いました。

 

― 曲作りはどのように進めましたか?

宮崎 はじめはお互いギターを持ってきて、コードはこういう感じにしようとか話したり。崎山さんはギター小僧なので、僕が見たことのないようなコードワークを弾いてもらってすごいなと思ったし、楽しいの連続でしたね。崎山さんがサウンドを引っ張ってくれるという確信があったので、それ以外のテーマ決定とかを僕が仕切っていきました。

 

― ギター好きの読者に、「劇情」で注目してほしいポイントを教えてください。

宮崎 間奏のギターソロですかね。(山本)薫のギタリストとしての可能性が見えてきているというか。彼も他のアーティストのサポートで高い評価を得られるようになって、ギタリストとしての地位を確立しつつあるので、その片鱗が見えるプレイだなと思います。今まで薫は空間系の音をメインに使っていたんですけど、あの間奏は歪みも控えめだし、クリーン寄りの音でごまかしが効かない環境を自ら作って打ち出したソロなんですよ。だから薫の人間性が出ているなと思って。しかもそれがいいプレイなので、ぜひ間奏を聴いてギター好きの人に元気になってもらいたいですね。

 

Qujila D

 

116日発売のメジャー2ndアルバムについても、どのような作品になるか話せる範囲で教えてください。

宮崎 このアルバムをまだ総括できてないんですけど、“広さ”がある作品かなと思います。高校時代に作った曲もあったり、作った時期という意味でもそうですし、コアになりすぎないようにポップスもあるけどロックのど真ん中もあるし、ヒップホップにチャレンジした曲やフュージョンっぽいのもあって。多ジャンルだけどそれがクジラ夜の街の街だよっていう、その“広さ”も楽しんでもらいたいです。

あと、僕は常にアルバムの通し聴きを推奨していて。さっきの“ギターソロの時代が来る”と同じで、今は1曲聴きの時代でアルバムが売れないみたいに言われていますけど、通し聴きがまた流行ってくれたらいいなって思います。アルバムを通してのストーリー性にも注目してほしいですね。せめて1回目くらいは1曲目から最後のトラックまで飛ばすことなく聴いてみてください。つまみ食いせず丸ごと食べていただきたい、という意思を作品に込めています。

 

― バンドとして大きな目標は定めていますか?

宮崎 この前、ドラムの秦(愛翔)が“3年以内に日本武道館に立とう”と言ってて、具体的でいい目標だなと思ったので、これからそう言おうと思います。もうちょっと曖昧に目指している方向性を言うと、子ども向け映画で大人も泣いてしまうみたいな現象ってあるじゃないですか。そういう良さをクジラ夜の街もバンドで体現できるんじゃないかなと思っていて。難しくなろうとはしないで、音楽をあまり知らない人にも届けられるようなわかりやすさを常に持ちつつも、最後のプライドみたいなのを持って音楽好きにもリーチしていく。これも“広さ”ですし、そこを目指したいですね。

 

― なるほど。

宮崎 難解さというのは、隠し味だと思うんですよね。それを表に出していくのが流行りつつあるので、もうちょっと簡単に考えてもいいんじゃないかなって。“ブームに反抗する”というのはロックの精神の一つなので、僕らはその流行りに反抗して、自分たちの作っているもので別の流れを作っていく。そういうムーブメントができればいいなと思うので、反骨精神でハッピーにやっていきたいですね。

 

― これからギターを始める方やビギナーにメッセージをお願いします。

宮崎 楽器って、練習じゃないと思うんですよね。教本を買って練習して…っていうのを最初にやろうとしすぎるとアップアップになっちゃうなって。みんな最初は趣味から始まるので、楽しいと思ったら弾いて、飽きちゃったなと思ったら距離を置いていい。どうかギターを弾くことが義務にならないようにしてほしいです。弾きたいように弾くのが一番だし、憧れが先行して苦しくなっちゃうこともあるかもしれないけど、最初は遊び道具くらいに思ってほしいなって。

 

― 距離を置いても、また気軽に帰ってこられる?

宮崎 うん、長い間弾かなくてもギターは待ってくれます。無理に向き合い続けると永遠の別れになっちゃう可能性があるから、適切な距離を保つのがいいんじゃないかなって。熱中しちゃったら弾きまくっていいと思うし、ギターとその人の適切な距離感がそれぞれあるんですよ。ギターはずっとそこにいてくれるから、自分が一番気持ちのいい距離で弾いてほしいなと思いますね。

 

Qujila E

 

左:G5420T Electromatic® Classic Hollow Body Single-Cut with Bigsby®

右:Jet(本人私物)

 


 

宮崎一晴(クジラ夜の街)

2017年6月21日、東京にて高校の同期生4人で結成。メンバーは、宮崎一晴(Vo,Gt)、山本薫(Gt)、佐伯隼也(Ba)、秦愛翔(Dr)。短期間のうちに多数の楽曲を制作し、都内ライヴハウスで活動開始。音楽コンテスト〈Tokyo Music Rise 2019 Spring〉や高校軽音楽部の全国大会で優勝したあと、ロッキング・オン主催〈RO JACK〉オーディションで優勝し〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019〉に出演。直後に〈出れんの!?サマソニ!? 2019〉オーディションから〈SUMMER SONIC 2019〉にも出演。2020年から全国各地のイベントへ出演を開始。2022年〈夜景大捜査”夢を叶えるワンマンツアー” 9〉を開催し、12月19日に渋谷WWW Xでのツアーファイナルでメジャーデビュー決定を発表。2023年5月10日リリースのEP『春めく私小説』でメジャーデビューを果たす。2024年11月6日にメジャー2ndフルアルバムをリリース。

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